(4/20調べ足し)嗅神経細胞軸索投射の分子機構を理解…嗅球で嗅神経細胞からの入力依存的に特異的な神経回路が形成される仕組み…の続編 前投稿
その後、初心者でもわかりやすく書かれたレビューを見てみた (嗅覚受容体に依存した軸索投射の分子機構;生化学79, 12, p.1152)1。ハエは少ないORで脳の機関もさほど大規模ではなく、遺伝子発現によるタンパク生成も神経系への軸索の延伸も遺伝的プログラムに沿って展開するいわばプログラム化された嗅覚情報処理系である。
それに対して、マウスなどの哺乳類では、ORは1000種類存在していて発現しないものもある(遺伝子の発現はstochastic;確率的に決まるとしている)、脳も十分大きく、神経接続の特異性はORから入力されるシグナルの強さに応じてフレキシブルに決定してゆくとされている。
哺乳類のような生物の感覚器ではOR遺伝子が新規に作られると新たな神経投射先が作られ、新たなにおいの識別が可能となる。(この結果は外池先生の講義中に紹介された論文で見いだされた現象とも一致する) 昆虫のような生物進化上“古い”生物では感覚器の性能のチューニングは為されない。それに対して世代交代サイクルが割と長い哺乳類のような生物の感覚器は、数世代程度の間に感覚器の性能のチューニングが必要になるのであろうと思う。おそらく生物の感覚器としての性能の方向性の差が表れている。昆虫のように世代交代が早ければ、突然変異によって環境の変化に対応すればよい。哺乳類などにおいては脳・神経系のネットワークの組み換えによって、環境の変化に対応しているのではと思われる。加えて人間の場合、言語による識別を脳内で行うことにより、さらに認知が深くなり香りの区別、分別のの力がより一層高まってゆくのではないかと考えられる(このために検証しなくてはいけないのは言語認知学、脳科学や心理学的手法と組み合わせられたものを、研究するのがよいと思う)。
この研究グループでは、脳内・神経回路がどのように獲得されるのかに関して、「末端の刺激受容細胞からの入力によって、脳内に新規な感覚処理(して認識)する新規神経回路が形成されうる」ことを示している。これを検証するために、マウスや哺乳類の嗅覚系の発生学、神経回路形成についての研究を進展させてゆこうとしているようだ。
a.aromaphilia: メモ;(理研CDB)理化学研究所|研究室の紹介|感覚神経回路形成研究チーム のテーマをチラ見してみた
1.嗅覚受容体に依存した軸索投射の分子機構