セミオケミストリー、アレロケミストリー
生物個体間、個体内においては細胞間に化学物質を介した情報のやり取りがある。特に種を超えた生物個体間における化学物質を介したコミュニケーション「セミオケミストリー」は1980年代から提唱されていた概念。アレロケミカルという言葉も存在する。確認をしてみていたが、セミオケミカルとほぼ同じものを指すようだ。用語が錯綜しているのは分野がまたがっていたことと、マイナーな研究であったことの表れだろうと思う。
※これまでにも総説など見てみた。
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昆虫では交配または寄生宿主の場所、シグナル伝達プロセスに生態学的に関連する状況などで、特定の組成からなる個々のフェロモンの存在が知られている。ヒトや他の哺乳類では、個人を区別する特定のフェロモンとして働くことが知られている。生物学における匂い研究は、化学物質を介したコミュニケーションの研究であり、1980年代から存在するセミオケミストリーの文脈上にあることが多い。
近年、昆虫の嗅覚受容体のCryo-EMは昆虫の嗅覚受容体が4量体構造である論拠になっている。これを元にMD等を合わせて考察することで刺激分子に対する受容体の選択性を評価できる可能性がある。昆虫の嗅覚受容体についての研究土壌が前進し、セミオケミストリーにも多少なりとも光が当たるのではないかと考えたりする。
化学刺激
昔自分の整理のために、情報伝達物質から化学刺激物質まで様々な化合物が生物の廻りにあふれているわけだが、それらを一覧化してみたことがある。※実際にはこれは結構乱暴な整理で、アップデートが必要である。*
情報伝達物質・化学刺激物質 | 機能 | 器官(ヒトの場合) | (媒体・存在濃度) | 化合物の特色 |
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フェロモン | 個体間情報伝達 | 鋤鼻器(又は鼻) | 気相・極微量 | ある程度の揮発性・mid~high MW・high selective |
ホルモン | 個体内情報伝達 | 生体内各器官 | 生体内(主に水系)・極微量 | ある程度の溶解性・mid~high MW・high selective |
味(味覚刺激物質) | 味覚(“味”と考えられている) | 舌、味蕾 | 水系・%~ppm | ある程度の水溶性・low~mid MW・~mid~ selective |
匂い(嗅覚刺激物質) | 香り | 鼻、嗅球 | 気相・ppm | 揮発性・low MW・low selective |
水生生物にとっての匂い | 水系・(ppm ?) | 水溶性・low MW・low selective |
匂い
念のために「匂い」についての定義も確認する。「匂いとは、人体において揮発性化合物の混合物が鼻の粘膜上の嗅覚神経細胞にて受容され、それによって生じる感覚刺激の対象である。」匂いの原因となる物質は、分子量20~400程度の揮発性の化合物であり、約40万種以上存在すると考えられている。* 合成香料の種類は3000を超えますが、世界市場で取引されている主なものは約500種類です。*
(多分続く。ここまで)