香りの知財戦略、意匠戦略

日経BPのサイト1で香水に関する知財戦略として、
• 香りそのものに対する知財戦略
• 香水のボトルに対する知財戦略
の2点から論じられていた。自分たちの苦労して作った意匠のコピーを防ぐ、研究成果を守るためにはどうしたら良いのだろうか?

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香りは実態が感じにくく、香料や香りの芸術・香粧品における香りの重要性についてなかなか理解が進まなかったために科学や技術、工学、ひいては法律などの世界で重要視されずに居た。特に法律で守られていないことは香料業界にとって痛手である。

と言うのは香料、特に香水の世界において顕著なのだが、既存商品の模倣というのはそれだけで職人技術の要求される高度な専門職であった。なぜなら香料原料を匂いで判別し、混ぜ合わせて創った香りの出来・不出来を判別できるようになるためには、長期のトレーニングが必要だからである。仮に有名香水の偽物が出現しても、素人が作ったものであれば一発で見破れた。それに長期トレーニングを必要とすること、香料業界自体がとても狭く、その世界に誰が居るのか皆知っている世界だったので、キチンと調香能力を身につけた調香師は他の調香師が創作した物を模倣することはマナー違反とされていた。

いままで、「香り」で商売をしているのは食品向け香料と香粧品向け香料である。これらは原料を香料会社が調合し、調合したものを食品会社や化粧品会社が製品に混ぜ込んでいた。香料は信頼たる企業にしか触られなかったのである。このシステムのおかげでクリエーターは守られ、模倣者はある程度排除できていた。だが、1970年代~1980年代と時代を経るに従って分析技術が向上した。それによって匂いが分からなくても、ある程度の複製が可能となってきた。匂いを嗅ぎなれて、鼻での嗅ぎ分けが可能になった人ならその完成度の低さが分かってしまうのだが、匂いを嗅ぎなれておらず、普段香りに意識的に接していない人にはその差が分からない程度に、コピーを作ることが可能になってしまったのである。

香りは芸術であり、技術でもある。だが、その成果が法律や特許からの保護をあまり受けられていない状態は、クリエーターにとっては不利、模倣者には有利な状況を作り出している。それでも分析技術は向上し続けていく、この状況をどう改善してゆくのか?

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さらに自分がいま調査中の「香りのディスプレイ」ではより問題が深刻だ、と捉える人が多いと思う。「香料をそのまま人の触れられるところに持ち出すかもしれない」という意味だし、分析すればおおよその組成は分かってしまう。いくら香料によるエンターテイメント効果や空間演出効果が高くても、そこに踏み込んでいくことは自殺行為と捉える人が多いと思うのではないか。そうして考えると、2010年の「アロマルネッサンス:匂い・香りのデジタル化による嗅覚情報通信技術の最先端のいま 」2などに出てくるワードはなかなか怖いものがある。

参考;
1.日経BP知財Awareness - 永澤亜季子のパリ発・フランス知財戦略 第3回:企業における社員の著作権と、著作権譲渡契約の重要性
2.フレグランスジャーナル社|セミナー・イベント|アロマ・サイエンス・フォーラム過去の開催内容

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