メモ;「サイバネティックアースへ――サイボーグ化する地球とその可能性/暦本純一」

オープンシステムサイエンス 原理解明の科学から問題解決の科学へ 所眞理雄 編著訳 (発売日:2009.01.15 ISBNコード:978-4-7571-6040-8)の中の一章が面白かった。ソニーコンピューターサイエンスの研究チームが収集した提言的研究。「第七章 サイバネティックアースへ――サイボーグ化する地球とその可能性/暦本純一」の章。

アーバンセンシング/センサブルシティ、集合知(wisdom of crowds)、フォークソノミー(folksonomy民衆による分類)…など面白そうなキーワードがたくさん出てくる。2009年の編集でありながら、センサーによるデータ収集の自動化でデータがリアルタイム化、情報の新陳代謝を考えなくてはいけない、というようなコンピューター科学などさすがと思わせる内容。

利用者から大量の質問を受け付けることで、システム自体が賢くなる、情報移動の双方向性(キーワード間の相関関係をシステムにバックしてゆく)。社会基盤としての空間情報。記憶の電子的拡張(一生の間に聞く音を128kbpのMP3にすると80y*24hは38TB、これにハイディフィニションの映像がついたとしても数PBの容量で収まり、充分“記録可能”だ)で人生をすべてデジタル化して保存する。ライフログを最初に提言した論文;1945ヴァネヴァー・ブッシュ”As We May Think”, “memex”記憶拡張機を提案。MITメディアラボ、ニコラスネグロポンテ「ビット(デジタルデータ)~アトム(フィジカルな実在体)」の対比と連携化・融合(現実の接点で生じてくる)。全知制御、ヒューマンコンピューターインテグレーション、ネットワークインテリジェンス…

面白い単語がたくさん出てきた。時間があったら詳しく見てみることにする。

1.オープンシステムサイエンス 原理解明の科学から問題解決の科学へ|書籍出版|NTT出版 早大中図あり
2.aromaphilia: 「オープン・スペース 2011」,「[インターネット アート これから]」展 を聞く
3.aromaphilia: メモ;「PUBLIC TALK #2[パブリック×ビッグデータ] 小林啓倫×市川裕康」
4.aromaphilia: メモ;イントラブログ
5.Rekimoto Lab

そろそろ「ノマド」は賞味期限切れか?

ノマドワーカーを手放しでほめていた去年ごろまでとは風向きが変わったような気がする。方々で警鐘を鳴らされ始めているように思うのだ。

一つ理由としては、インターネット業界のイノベーションが近く頭打ちになるのではないかということ。パソコンも十分浸透し(スレート端末のようなユーザーフレンドリーさが求められる状況)、ネットワーク(IPv4→IPv6になった時には危機感があったが)も、家庭向けネットワーク(DLNAなどの規格)も、ほとんどが整備済みである。ツィッターやフェイスブックといったSNSも位置情報技術も“クラウド技術”も通信インフラもだいぶ成熟した。“ビックデータ”というものも直近で一般メディアでも見かけるようになったが、開発の方向性も実用化後の姿も見えているといえる。新規技術の流入が止まり、業態としては安定化の方向へと向かうと思われる。

そんな状況下で、まったくもって新しい仕事のスタイルととらえられていた“ノマド”が急速にその新奇さを失いつつある。どういうことを仕事にしているのか、明らかになってしまったし、彼らが身軽に乗り込んで行けるバージンスノーな領域は、あまり残されていない状況になりつつあるのかもしれない。反面出てきたのが、仕事の安定性・収益性に対する懸念だ。

どうもこの状況は1990年代後半~2000年くらいにかけての「フリーター」に似ている気がする。ここら辺で方向転換があることを考えないと、ちょっと危険かも。「FB~クラウド」バブルが弾けてしまうかもしれない。ビックデータはまだ大丈夫な気がする。それの根底になる統計処理と社会学理論なんかもまだ大丈夫な気はする。

1.情熱大陸の安藤美冬さんのノマドワーク特集の反応がtwitterとfacebookであまりにも違いすぎて興味深い。 | 東京ノマド営業所
2.情熱大陸「ノマドワーカー・安藤美冬」書き起こし - Togetter
3.次世代サービス共創フォーラム > 佐々木俊尚のIT進化論 ノマド論は「強者が勝つ」論ではない
4.ノマドワーカーがクールだなんて幻想だ! というお話 : ライフハッカー[日本版]
5.■実はドリフトワーカーを大量に生む、ノマドワーカー礼さん主義に待った!|前川孝雄の"はたらく論"

今ちょっと考えているのは「クローズドネットワーク」である。どうやってレベルの高いコミュニティを形成し、活発な議論を展開して、独創的なアイディアを練り上げるか?それをいかにリークすることなく、他者の情報はきちんと吸収しながら練り上げるか?だと思う。それと依然としてIT系ではない新しい技術というものはコンスタントに求められ続けていると思う。それにしても、なかなか難しい世界へとなって行きますね。

a.aromaphilia: メモ;イントラブログ

(個人的なことを書く)最近ちょっとだらけすぎ

(個人的なことを書く)最近ちょっとだらけすぎ。もう少しきびきび動いたほうがよい。

テーマ的にはやりたいことも結構ある。ただしここに書けることもあるし、ここに書くべきではないのかな、と思っていることもある。研究テーマに関してはここに書かないほうが良いものだと完全に思っていて、研究室内のネットワークに自分のフォルダーとCMSソフトウェアをアップした状態で、自分のノートをオープンにしてゆけば良いかなと思っていた。でもちょっと、それを口実にしすぎている。動きが遅い。

さっきまで図書館に行って、自分の調べたい内容で、調べていて、ここ1か月、下手をすると2か月全く動いていないので、それはどうだろう?という危機感にも近い感覚を覚える。このままでは拙いでしょう?

メモ;3/22について調べる

私事と言えば私事ですが、幸せなお知らせが来ましたので、ちょっと3/22について占いとか見てみました。(誕生日辞典が小さくなってしまったけど見れるかな?)

誕生花366日・花言葉 【3月22日】
生年月日(誕生日)データベース/3月22日生まれの人々
3月22日の誕生石(ソグディアナイト Sogdianite) - 誕生石辞典 | 色見本大辞典
3月の誕生石アクアマリン
3月の誕生石珊瑚(さんご、コーラル)

WordPressで イントラブログを

ワードプレス1は自宅サーバーやレンタルサーバーを使っている人間にとってはかなり一般的なブログ管理ソフトだ。これを非公開の形で運用して、ローカルなネットワーク上のイントラブログ、もしくはアカウントとパスワードでログインすることで閲覧可能なサイトとして運用できないかと考えている。2-4クローズドなスタイルを取ることによって、機密性の高い、ノウハウに直結した情報の共有化を図りたい。

通常、オープンにしているサーバー上でホームページを公開する。サーバーは通常LinuxのようなサーバーソフトがOSとして稼動しており、単純なホームページであれば、htmlファイルなどを階層化してアップしたりする。それに対して一般的なブログでは、サーバーサービスとコンテンツマネージメントシステムが一体となったサービスを用いるのが一般的である。

ワードプレスは、オープンにしているサーバー上でホームページを公開するのと同じ要領でサーバー上にコンテンツマネージメントソフト(CMS)5としてインストールして用いるブログ管理ソフトだ。もちろんそれなりの知識は必要となるが、サーバー+CMSを自由に使いこなせれば、オリジナルwikiの立ち上げや、独自デザインのサイト立ち上げ、トラフィックのコントロール、限定的な情報の公開などが可能になる。トラフィックの管理や投稿の簡易化、またはスマートフォンなどに最適化された表示形式での応答、検索サービスへのキーワードの投稿が容易になる。自宅サーバーやレンタルサーバーでコンテンツ公開したい人、ブログのスタイルをより自由にデザインしたい人に、ワードプレスなどのコンテンツマネージメントシステムは選ばれている。

ワードプレスはwidows server 2003上でも動作することが確認されている。非公開にするためにはアドオン(パッチソフト?)をインストールしてやるか、PHP(?)の命令文を直接書き換えてしまうかしたら良いらしい。3

一応スマートフォンなどでイントラ外からも確認したいと思っている。これは更新情報をメールサービスなどでタイトルや冒頭文のみメーリングリストに投稿するか、ツィッター(非公開にして、メンバーは申請式にする)にメール経由で投稿したらよいかな、と思っている。イントラブログ内の情報も外部からの投稿もメール経由、もしくはRSS経由で転送するシステムを確立しておけば、イントラブログのどこを確認したら良いか分かって良いのではないか?と思っている。

参考;
1.WordPress | 日本語
2.WordPressを非公開設定で使う | 格安レンタルサーバーの選び方
3.wordpressで非公開コミュニティサイトを作る(1)認証機能をつける - atl*weblog
4.Windows Serverで社内向けイントラネットをお金をかけずに構築する時の選択肢 | WindowsServer管理者への道
5.オープンソースCMS比較表(WordPress・MTOS・Joomla!・Drupal・XOOPS)/CMSとは/格安のCMS型ホームページ制作パック「自力」PC・携帯・スマートフォンサイト対応/WordPress構築

関連投稿;
a.aromaphilia: メモ;イントラブログ
b.aromaphilia: 私について、このブログで書こうとしているコトについて
c.aromaphilia: いまさらtwiter
d.aromaphilia: 昔のホームページを近々整理する

(注;13/6/12)wikiはwiki専用ソフトを使用したほうが良い。誰でも更新できるようになっているのがwiki本来の使用方法で、リンクなどを自由に設置はできるとウィルスなどの危険性が高まってしまう。その点がブログとwikiの考え方の違いである。不特定多数の書き込みと、自由なリンク敷設を両立するのはアカウント方式にしても、ウィルスなどの危険性からNGだと思う

ipod touchの限界か

しかし不便だ。

dropboxを用いていたが、ipod touchの内容(音楽、PDFのような元々専用ソフトウェアがインストールされているもの)を同期しようとするとワンステップではどうしようも行かない。そんなの同期フォルダのターゲッティングか、再生ソフト・電子書籍ソフトのターゲッティングを変更すれば良いだけではないか?

でもそれが出来ない。摩訶不思議な保護主義というか、囲い込み作戦というか…。

ちなみにsugarsyncも試してみた。あまり役割も出来ることも変わらない?sugarsyncの方は音楽フォルダなんかを同期するのに向いているという触れ込みで、音楽フォルダをターゲッティングすれば簡単なことである。アンドロイドでは公式音楽ウェアの力が弱いのか、その他の音楽アプリも充実しているから、sugarsyncを使って音楽を聴くというのは良いのかもしれない。iOS系は駄目そうである。オープンソースにしてターゲッティングを可能にしてくれという感じだ。

あとicloudも試してみた。macだったら便利なのかも。icloudソフトウェアのインストールはwin vista以降で可能になっているようで自分のPCがXPなのでちょっと無理。icloudソフトウェアをインストールしてicloudのターゲッティングをPC内か、NAS上にすればかなり効率よく同期できるのではないかとも思うのだが。また、icloudは容量が弱い。満足に音楽やら何やらで使おうとするとあっという間に容量不足になってしまいそうだ。

以上。不満。

メモ;マトラボ(MATLAB)

そもそも何をするためのソフトウェアなのか?表計算と何が違うのか?

要素臭の研究では、従来マススペクトルを用いてその再現が出来るような解析ソフトを組もうとしてきた。マススペクトルデータをエクセル・CSV化し、一旦マススペクトルデータを行として表される数列にしておき、様々な香りのマススペクトルの行を集合させて行列にする。その行列を基底ベクトルの線形結合で表されるとして、行列計算をしてゆき基底ベクトルを求める。この基底ベクトルの組み合わせが要素臭の組み合わせだと考えている。

マトラボは行列計算が可能なプログラミング言語で、プログラムに掛かる労力を低減させてのプログラム開発が可能である。実際には計算速度の関係などもあり、商業向きのプログラミング言語ではないが、多彩な関数が揃っていて簡便に行列計算処理のプロセスを検証できる。

参考;
_.MATLAB - Wikipedia
_.特別研究I: MATLAB演習(2005年度版)
_.Command Summary

直近の課題 (個人的なことを書く)

(3/8のメモから)研究室の学生さんから第一回目の引継ぎをする。GC-MSのデータ取り出し方を教えてもらい、データ書式のtxt化、エクセル化を教えてもらう。データはその処理の後、matlabというソフトで行列計算処理をする。

やはり基底ベクトルの計算方法で用いているプログラムや、その後実在要素臭の近似算出方法については論文を読んでも分からなかったし、一度院生の大まかな説明を受けても分からなかった。
多変量解析とケモメトリックス的な数値処理に関してキチンと勉強してゆくことが必要になるし、それを先生は鍛えようとしているようである。

だがそれと並行して従来から集めていた香りの周辺学術のリンク化は怠ってはならないし、この2年でやった調香のトレーニングと自作の調香品についてのアプローチのまとめ、先生たちから提供してもらった香料作りに役立つ資料の整理はしておかなくてはならない。今やっておかないと今後はどんどん忙しくなってしまうだろうし、その資料に対する有用性の認識に翳りでも生じてしまえば、使いやすいように整理するというモチベーションは永久に失われてしまうだろう。

また香水輸入に関してもキチンと調べきっておくことも、この3月中に為さねばならない。これも纏まった時間が取れるのはこの一ヶ月のみなのである。

また先生の要求している内容(と自分が思い込んでいる内容)、研究室で自分が為したい事柄でもある、は
• キチンとこのカテゴリの基礎学力をつけること
• 自分の本来のカテゴリ(調香というよりは有機化学、ホストゲストケミストリー)の習得者としての研究ディスカッションへの参加 (最終的には自分の研究テーマを確立して、キチンと助けてもらえるようにする)
現状、少し実力(英語のスペック、こんなもの金で買えればよいのに)と気迫(気迫だけの研究者なんて詐欺師とどれほど違うのだろう?そんな疑問はいったん置いておいて)が不足していたことも事実なら、その二項目が依然として必要なのも事実。勉強をして追いつき、追い越そう。

こんなマイナスからのスタートをしなくてはいけない理由は、会社時代に自分の病理的性格が自分をボロボロにするのを放置しておいたためでもあろう。会社時代にこびり付き、錆び付いてしまったメンタリティの時間軸を逆戻し、自分本来の持つ研究への情熱やフレッシュな感性を取り戻したい、というのもある。会社時代にやっていた研究手法自体はアクティブなスタイルを出来ている(ブログに自分の考えを書き、クラスター化できていたのも会社という空間に居て、色々なものを押し付けられたからこそ)から、願わくばその良い両面を併せ持った研究者になりたいと思う。

メモ;イントラブログ

イントラブログに関心を持っている。アイディア創出のため、自分のやっている仕事に対する自覚向上のため、さらには自分の専門分野と自分の専門外の分野をキチンと繋いでゆくために、ブログという方法は有効である。だが自分たちのチームで進めている仕事に関する情報を外部に晒すことは出来ない場合どうしたらよいのだろうか?専門的な場合、一般の読者が付かないということもあり、公開ブログはそぐわないと考えられる。

このクエスチョンに対しては、2005年以降に「イントラブログ」という方法が提案されており、適していると考えられる。元々は、ウェブログ,ブログの普及により、ブログをビジネスへと活用できる「イントラブログ」が作られ、ビジネスへ導入がされ始めている。ブログ的な思考方法、アウトプットのためのツール、として企業に提案されてきたのである。

イントラブログは,公開型ブログとはちがって、会社内のネットワーク内のみで公開される非公開型ブログで、会社社員為だけの情報公開を行うビジネスツールだ。イントラブログでは形式などにとらわれない,様々な情報や知識を共有化し自由に検索できる。

そして次第に知識は蓄積され、不定形のデータベースとして利用可能となる。イントラブログは企業だけでなく,学校など多くの団体においても非常に使いやすいと考えられる。

今のところ個人的に考えているイントラブログに要求したい性能としては、
• セキュリティ(キチンとスタッフのみが更新できる)
• 閲覧の許可/不許可がコントロール(ログインアカウントにより閲覧可能な記事に制限がかけられるなど)可能であること
• イントラ内のファイル(ウェブページに限らず)へのリンクが張れると良い
• 外部ソースの利用が可能(ツィッターフィードや外部ニュースフィードが張れると良い)
• 配信(RSS/Atom)が可能、メールで投稿できる
• スマートフォン(iOS/android)に親和性が高い
ちなみにこのカテゴリのプログラムはCMSという呼称で呼ばれており、ソースとしては色々あるようだ。(自分はキチンと調べつくせてはいないのだが)

参考(古い記事ばかりだが);
1.-イントラブログ-
2.WordPress - Wikipedia
3.ブログ - Wikipedia
4.iPhone 向け社内ブログ閲覧アプリ ”iCOMLOG”を公開 - ZDNet Japan

5.@IT:運用 Windowsでイントラ・ブログを構築する(前編)
6.[ThinkIT] 第4回:イントラブログの未来 (1/3)

conversation with myself “自己との対話”

(今回は個人的なことを書く) ビル・エヴァンスのうつむき加減にピアノに向かっている写真が好きだ。このアルバムの写真は遠めに視線を遣るビル・エヴァンスの写真で、うつむいては居ないが、独りだ。しかし独りで映ってはいるもののほんのりと夕暮れ色のような光の中に居るかのようにも見え、音楽の求道者が静かな探求の末にたどり着いた凪、もしくは暖かい夕暮れ色の化身のような永遠、を思わせるこの録音の浄福感に満たされているかのようにも感じられる。

アルバムの内容も独りで多重録音に挑戦したものになっている。解説文に拠ると3度の演奏を多重編集しているという。録音技術の未熟なこの時代にあって相当先進的なチャレンジだったといえる。大概別の楽器を用いて、あるいはシンセサイザーなど同じ鍵盤を通しつつも別の音色で演奏できる電子楽器を使うのが一般的な多重録音なのではないだろうか?しかし同じピアノで多重録音をしているこのアルバムはかなりの異端であろう。

時々、このアルバムを聴きたくなる。いつも聴くと音楽のオーラが薄まってしまうので、聴くときは念入りにタイミングを選んで、なるべくヘッドホンでは聴かず、オーディオを念入りにチューニングして大きめの音で聴くようにしている。いつだったかの日記に書いたように、この音を聴くとフランスのアヌシーの大学生寮での遅い夕暮れを思い出す。からりとした空気、何所までも青い空が段々と薄墨色に沈んでゆく、真っ白だった雲は夕暮れのオレンジを反射していたりする。もう一度あの空気をゆっくり味わいたいと、ふと思ってしまっている。何に対しても焦りは感じていなかった。大学を留年したから成績を向上させようという意欲もそこまで強くなく、業績を上げようという見栄もなく、自分や他人の損得を計算したりすることもなく、自分の仕事と信じて何かと何かを網羅したり・組織化したり・再解釈したりする見通しもなく、しかしフランス語を学んで目の前の人と意思を通じ合わせて、日々感じたことを文章化して・結晶化して行こうと、唯していた。そんな感覚。忘れてしまった感覚。仕事に没頭してみても、お酒を飲んで酔っぱらって心がなんとなく自由になったからといって戻ってくる感覚でもなく、戻るべき場所でもない。多分、憧憬であって、ノスタルジーであって、黄金色の浄土なのだろうと、今は思う。

辻邦生の短編「ある晩年」に登場するファンスターデンの境地かもしれない。かつてはその香りに満たされ、その光に満たされていたが、その扉は閉められ、厳重に鍵をかけられている、その香り、その光に心奪われないよう自分の世界を理解し、秩序付け、コントロールして行く。しかし全てが完成し、完結し、そして崩れ去ったとき、再び開いた扉からその香り、その光が我々を包むのかもしれない。

自分にとってこのアルバムはその香り、その光の片鱗を感じさせるものなのである。仮に一時であっても。

Amazon.co.jp: Conversations With Myself: Bill Evans: 音楽
ビル・エヴァンス - Wikipedia
Amazon.co.jp: 見知らぬ町にて (新潮文庫): 辻 邦生: 本 (たぶんこれに収録されている)
「ある晩年」: 辻邦生 への旅