芥川賞メモ

(2013/1/15)黒田夏子さんという方。今年の芥川賞をとられた75歳の方。昨今の内容的にも軽く読めて、文体も軽い小説が多い中、かなり独創的で挑戦的な文体・内容のようである。少し読んでみたい。

実験的な小説。一般的に「うける」小説というものは、時代感を反映した文章で・語り口で、内容的にもある程度分かりやすい・もしくは入って行きやすいものであるような気がする。しかし彼女の文章は、それらとは一線を画しているようだ(語弊があるといけないのでいっておくが、芥川賞は、森鴎外を文体の師とした平野啓一郎のようなちょっと傾向の異なる一種“純文学”的な小説家を広く世に知らしめる賞という側面もあるのだとは思うのだが)。

ともかく、実験的な文学。というアプローチは、純文学的な観点とともに考える。辻邦生も短編小説では、そのような試みを作家としての地位が確立してからも行った。しかしこの黒田さんという作家さんはそんなことを誰にも投稿することなく、多くの人に見せるわけでもなく行い、今回の受賞に至った。受賞するまで一般の人には知られることもなく、しかし作家グループで作風を仲間と作り上げたわけでもなく、作品を作り上げてき、作風を作り上げた、とのことだ。

彼女がそんな感覚を持って作品を作っていたのかはわからないが、充分に実験的な小説群であろう。そしてそのように作る過程は、書庫との対話、自己との対話、なのかも知れない。このプロフィールだけでも充分に“純文学”であるように思う。どのような世界が広がっているのだろう?少し読んでみたい。

ある種のアウトサイダーアートのような世界であったら、ちょっと嫌だなぁと思ってしまう。あのような公開を前提としていない作品を見ると、他者の愛玩品を道路に打ち捨てるような、人のプライベートを暴いてしまったような、嫌らしい気持ちになる事がある。文学の場合、本人が「私小説」と自称してそのような感覚を伴う作品を公開することもあり、それもまた文学の一側面であるとも言えるのだが(そのような“私領域”への侵入感は文学と絵画の特権だ)。ま、ともかく本屋に売っているであろうから、ちょっと読んでみて気が向いたら色々調べてみよう。

コメントを残す