自分の研究、自分の役割

(2013 7月 29, 月曜日)上田さんの香りのワークショップに参加した。これは建築家とのコラボレーションによるインタラクションアートが、オカムラアートスペースRで展示されている関係の企画である。参加者には女性が多かった。渋谷のアートギャラリーのオーナーや、香りの専門誌の出版社のかた、バラ・ランの栽培家の方などがいらっしゃり、多彩だった。

また7/22月曜日に行われた上田さんのインタラクションアートのオープニングセレモニーは貴重な場だった。オープニングの挨拶のなかで上田さん自身に僕の名前を協力した人間として出してもらえたし、天然香料に強い香料会社の方と名刺を交換できたし、その後話した人々とも香りの話をして自分の研究について話し、ということができた。

さて自分のしなくてはいけないこと、自分の進めて行くべき方向性について、順位付けをしつつ明らかにしておかねばならないと思う。それは以下の通り

  • 香りの生体のコーディングを解析し、匂いの近似技術を作る
  • 香りのバーチャルリアリティ技術(センシング・ディスプレイ)をより洗練させ、同時に実用的に普及する場面で役立つようにする
  • 香水文化の理解・香り文化の普及・香料の取り扱い技術など役立てる場面で役立つようにする

自分の立場を述べる際に使った言葉は、「自分の研究分野は香りのバーチャルリアリティ基礎開発という分野になる」「自分の研究対象は要素臭の開発」である。(名刺を持つことは有用で、お金はもらっていないが、研究を紹介したり自分を印象づける際には有効だと思う…もう少し派手で面白味のある名刺にできれば尚良いのだが)

自分のしようと思っているもっとも重要なことは、香りの生体によるコーディングを明らかにした上での近似臭技術である。この表現は元々言っていた、要素臭の開発、ということをより現実的に考え直した表現方法になる。

真の要素臭は膨大な数になってしまうと思われる。また真の要素臭は論理的に記述ができても、仮想的なものにすぎず、実際の香気として調製できない可能性もある。それらを踏まえるとバーチャルリアリティで使用可能な香りの要素化は近似臭作成手法の開発と表現した方がよく、その過程において重要なことは生体における香りの受容と信号化、つまりコーディングに沿うような手法であるべきである。香りのコーディングをどこに論拠するのかについてはまだ構想段階ではあるが、ORタンパクレベルもしくは神経細胞(ORN/OSN)レベルであるだろうと思う。

香りのセンシング・ディスプレイ技術は実際のバーチャルリアリティには重要である。これは研究室が元々持っていた技術であり、自分はその開発を実際にしたわけではない。ただし自分は紹介者ではあることは出来ると思うし、自分がこれまでに会ってきた香りの専門家にとって新しいものであるのではないかと思う。紹介し、使ってもらうことで、新しい作品が作れるであろうし、研究室にとっては保有技術に注目してもらえる機会になるので、出来る限り間を繋ぎたい。また作品つくりは作家さんの仕事であろうと思う。技術の人々がインタラクションの作品を作ったとしても、技術に振り回され本当の面白さ、新しい感覚の体験を提供できないような気がする。

香りの文化・普及という観点は周囲の人々がもっとも期待しているところなのかもしれない。調香を学んだ経歴、香料の取り扱いや研究室で保有しているディスプレイやセンシングの基礎知識の部分はインタラクションアートを作る上では有用だ。自分が多少の香水マニアでもあり、仲の良い香水店があることは香り文化の普及、インタラクション作成の際のコンテンツ~香りフィッティングには有用だと思う。

それでも、自分のしようと思っているもっとも重要なことは、香りの生体によるコーディングを明らかにした上での近似臭技術である。香りの技術にとって、これが最もコアな部分の技術であり、それを確立するために必要なものを学んで来た、という自分に対しての思いもある。

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