「食品・化粧品・医療分野へのゲルの利用 (新材料・新素材シリーズ)  シーエムシー出版 (2010/05)」

ゲル状態は食品や香粧品には欠かせない概念である。食品でいうと、ゼリーや蒟蒻がゲル状態の物質である。ゲル状態は弾性があり、多量の溶剤(食品の場合はほとんどが水)を含んでいる。

液体の吸収・保持機能がある、固体と液体の中間的力学強度を持つ、というのがゲルの特徴である。なぜこのような特徴を有するのかというと、「分子や粒子がネットワークを形成し、三次元の網目中に流体を含んだ状態および材料」だからである(「3rd現代界面コロイド化学の基礎(日本化学会・丸善2009)」より)。

ゲルは化学ゲルと物理ゲルに分類される。

化学ゲルは高分子間を共有結合で直接架橋することでネットワークを形成したものである。特に有名なものが、オムツに用いられている吸水性樹脂で、親水性高分子に少量の架橋剤を反応させたものである。物理ゲルは高分子間を直接共有結合を形成するのではなく、高分子間に働く水素結合や疎水性相互作用のような非共有性の物理的引力相互作用に寄って架橋点を形成している。自然界に存在するゲル、ゼラチンや寒天ゲルは物理ゲルがほとんどである。

架橋点の形成方法により様々なゲルを形成することが可能だが、実用化されているゲルは限られている。その理由は生体安全性(皮膚接触、経口毒性など、主ポリマーに関してまたは残存微量成分に関して)、生分解性(環境放出した際微生物によって分解されうるか)、魚毒性など解決すべき課題が多くあるからである。現在実用化されているゲルは多くが生体由来、もしくは20世紀前半の化学合成ともに現れてきたポリマーを利用するものであって、上記の問題から新規ゲル材料はなかなか参入できないようだ。だが、ゲルに関して知らずにはトレンドに即応した食品や香粧品の開発が出来ないことも事実。工学的にはこのCMCの本あたりが頭に入っていたらよいなぁ、と思う。

ちなみに入門編は(「3rd現代界面コロイド化学の基礎(日本化学会・丸善2009)」の3章「ゲル‐材料、性質、機能」あたりでよいのではないかと思う。なお理学研究にとってはゲルはとても面白い素材である。物理化学的な理論研究、あるいは新規機能性ゲルの開発をする超分子化学両面からのアプローチがあるが機会を改めて詳述する。

http://www.amazon.co.jp/%E9%A3%9F%E5%93%81%E3%83%BB%E5%8C%96%E7%B2%A7%E5%93%81%E3%83%BB%E5%8C%BB%E7%99%82%E5%88%86%E9%87%8E%E3%81%B8%E3%81%AE%E3%82%B2%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%88%A9%E7%94%A8-%E6%96%B0%E6%9D%90%E6%96%99%E3%83%BB%E6%96%B0%E7%B4%A0%E6%9D%90%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E9%87%91%E7%94%B0-%E5%8B%87/dp/4781301983/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1282005106&sr=8-1
より
食品・化粧品・医療分野へのゲルの利用 (新材料・新素材シリーズ) [大型本]
金田 勇 (監修), 西成 勝好, 長崎 幸夫, 梶原 莞爾
大型本: 245ページ
出版社: シーエムシー出版 (2010/05)
ISBN-10: 4781301983
ISBN-13: 978-4781301983
発売日: 2010/05

参考入門書
http://www.amazon.co.jp/%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E7%95%8C%E9%9D%A2%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89%E5%8C%96%E5%AD%A6%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E-%E5%8E%9F%E7%90%86%E3%83%BB%E5%BF%9C%E7%94%A8%E3%83%BB%E6%B8%AC%E5%AE%9A%E3%82%BD%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3-%E7%AC%AC3%E7%89%88-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8C%96%E5%AD%A6%E4%BC%9A/dp/4621080873
より
現代界面コロイド化学の基礎 原理・応用・測定ソリューション 第3版 [単行本]
日本化学会 (編集)
単行本: 486ページ
出版社: 丸善; 3版版 (2009/4/18)
言語 日本語
ISBN-10: 4621080873
ISBN-13: 978-4621080870
発売日: 2009/4/18

超入門
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%AB

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