ドコモと電波跡地

ドコモが新しい周波数帯域を押さえた。もともとアナログテレビ放送が終了するのに伴い、課題となっていた電波帯域用途の割り振りのし直し1)。新たに空く(現)アナログ放送の帯域は「マルチメディア放送」用途とする方向で考えられていたが、その事業者がドコモ陣営に内定したという報道があった2)。映像配信はネット上ではかなり苦戦している商分野であるとされていて、ドコモがこの電波帯域でなそうとしているサービスがどれほどの採算性を実現できるのかかなり気にはなる。経営陣もかなり高リスクであるという認識の下、この分野に乗り出すのだという報道があった。

ドコモはsimロックフリー端末化を国内で最も早くに掲げた。そしてその受け皿として最大手になるだろうと考えられるこのサイトで紹介したこともあるb-mobile(日本通信)はfoma回線をベースとしている3)。i-Phoneで新規顧客を獲得したsoftbankに対して、ドコモの次の一手は、このsimロックフリーと、softbankに勝る良質なfoma回線網の低価格での提供だといえる。

もともとドコモはsoftbankに比べ広い電波帯域を押さえており、電波帯域の関係から、今のsoftbankの携帯通信網はフィジカルに飽和状態…ひいては「繋がりにくいsoftbank」という結果をもたらしているという。やはり、無線通信が隆盛を極め、無線経由でやり取りをされる情報量が増えれば増えるほど、「もともと広い帯域を押さえていた」企業がより強く振舞えるということに繋がっているのだと思ってしまう。しかし同時にアナログテレビ放送帯域「跡地」を兎にも角にも押さえたドコモ。営利企業としては正しい手の打ち方だと思う。

1. 放送電波のすき間に眠る「埋蔵金」 :日本経済新聞
2. 携帯向け新放送、NTTドコモが運営事業者に :日本経済新聞
3. 落胆したもう一つの会社 :日本経済新聞

硫黄の匂い、「サルファーケミカルズのフロンティア(CMC 2007年3月)」

硫黄の匂い…とは言っても含硫黄有機化合物である。

一般に硫黄というと温泉の卵の腐ったような匂いや、触るとかぶれてしまう危険性のある物質と認識してしまい、香料には程遠いイメージがある。有機化学に触れたことのある人の中には「有機含硫化合物」といったら、チオール(メルカプタン)に代表されるように強烈な悪臭物質として、それを連想する人も居ると思う。

しかしその個性ある香味とその強さ(低閥値)ゆえに,有機含硫化合物はそれが広く存在している香料植物や食品類の鍵香味物質となっている場合が多い。近年の分析機器(高速液体クロマトグラフイー、ガスクロマトグラフィー、質量分析、核磁気共鳴装置など)の急速な進歩と、天然精油や加熱調理で生ずるフレーバーなどに対する地道な香気分析によって、微量含硫香気化合物がその鍵香味物質であることが多数見出されたのだ。微量含硫香気化合物は,嗜好性の高い香りと味の創生に一定の役割を担いつつある。学校でもチオメンタノンやジエチルサルファイドやメチルチオブチレートのような含硫黄化合物を香料として処方中に微量添加する処方例について検討したりしている。

このような微量含硫香気化合物の総説としては成書になるが、「サルファーケミカルズのフロンティア(CMC 2007年3月)」などがある。本章の執筆は高砂香料の山本氏である。簡略化して抜粋する。

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最近の天然精油および食品の成分分析の進歩は著しく,新規成分も多数発見されている。特に食品は種類も多く,成分分析の膨大な研究情報が蓄積されている。ここでは含硫化合物が精油や食品の香味特性に比較的重要な役割を来たしている事例を紹介する。
嗅覚のメカニズムが奥深いことを示す現象の一つに.関値の低い化合物はその濃度により香気の印象が変化する場合が多いことが挙げられるが,特に合硫化合物の場合は極端に変化する例が多い。

通常の濃度では強すぎて悪臭でも.希釈することにより香気印象が変化して望ましい香気となる場合が多く、相当数の含硫化合物が極低濃度の状態で、広くフレグランスおよびフレーバー商品に使用されている。例えば,のりの微量含硫成分であるジメチルスルフイドは.通常の濃度では悪臭であるが.極薄めると独特なのりの好ましい香気印象を与えるようになる。問機にジブチルスルフィドの場合は,非常に強いメルカブタン様悪臭を有するが,希釈するとグリーン,バイオレット,ゼラニウム様香気となり,グリーンやフローラルのトップノートの付与など.ナチュラル感や嗜好性を高めるために.バイオレットやローズ系調合香料に用いられている。

安全性.環境問題などから,香料の使用規制問題もきびしくなり、新規香料素材においても,安全性の基準や開発コストの観点などから汎用香料の開発はハードルが高くなりつつある。そのような観点から,創香味の研究においても.個性的で閥値も低く強力な匂いを持つ香料化合物を,極小量使用して差別化を行うという考え方もトレンドになりつつある。今後新素材開発においても,小量ストロングの香料物質の開発研究が今まで以上に盛んになると思われ,中でも含硫香料化合物は着目されている。本物志向,グルメ志向が加速する21世紀の香り文化のニーズに対して,個性的な合硫香味物質が,嗜好性の高い天然の味や香りの創生ツールとして、今まで以上に多角的に利用されていくことを期待したい。

最近の含硫香味物質の研究における進歩に関して、合成手法の進歩とあいまって、分子の3次元レベル(光学異性体)での分析、香気特性などの研究も加速したが、紙面の都合上、合成法に関しては他総説などを参照していただき、ここでは天然鍵香気物質、新規合成香料、光学異性体、加熱調理フレーバーおよび特殊な用途などの話題を紹介する。

合硫化合物の香料化学を中心に最近の進歩を紹介したが,紙面の都合で省略した部分も多々あるので,詳細は記載した文献などを参考にしていただきたい。

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NAS + Xperia

NAS(baffalo製)Xperiaを組み合わせて使えばかなり快適な生活が出来るだろうと考えていた。自分なりに色々やってみて出来たこと、出来なかったことを纏めておく。

Logitec; LAN-W150N/APU2

家でXperiaを快適に使うためには無線LANが必須となる。今まで有線でネットワークは構築済みであったので、それにアクセスポイント(AP)を追加する形で無線化した。ちなみに無線LAN親機には無線LANルーター親機と無線LAN AP親機という2種類がある。その差はルーター機能(簡単な説明別の説明)の有無にある。つまり家庭内のネットワーク機器にローカルアドレスを振り分ける機能が付いているかであって、無線LANルーター親機と無線LAN AP親機の関係は、有線ネットワークにおけるルーターとハブの関係にあたり、ひとつのネットワークにひとつのルーターが必要となる(ルーターを置かない、複数のルーターが作動してしまっている、という状況はエラーの元になる)。今回有線ルーター機能はフレッツからの貸し出しモデムに内蔵されていたため、APを追加することで(有線ネットワークでLANポートを追加しようという場合にはハブを追加することで)ネットワークを拡張できる。

テレビやゲーム機、フォトビューワーのような家庭向けwifi(≒無線LANアクセス可能な)家電がかなり浸透しているために無線親機は値段が下がりつつあり、しかも高速なものが安価に入手可能になった(現在の市場価格は150Mbps機種で約5000~、300Mbps機種で約8000~ほど)。速度の方も54Mbpsの機器が当初の無線LANにおいてはスタンダートがったが、現代のwifiは通常品で150Mbps、最新の機種で300Mbpsが出ることになっている(正確には機器セッティングが必要なはずだから、全てのユーザーでこの最高速度が本当に出ているのかなぁと疑問になってしまう)。今回入手したAPはLogitec; LAN-W150N/APU2は150MbpsのAP親機と子機がセットになったもので、ACアダプターの省略された旅行者向けの商品である。使い方としてはホテルのサービスLANポートに接続して、離れた場所でiPod touchやPSPやDSのようなwifi対応した端末を用いたり、ノートパソコンを用いたりする場合である。ACアダプターを省略し、USB給電で使用することイメージし、装備が極力そぎ落とされている(参考)。もともと値段もかなり安価に設定されていたが、現在ルーター機能も搭載した後継機種に代替わりしたので¥2000をわずかに切る価格で入手できた。

ただし本機には設定上難しい点が一点あって、それはWEP/WPA設定である。セキュリティ上、無線LANを用いる際には暗号化をすることが推奨される。特に自分の使い方ではネットワーク上にNASが載っているので、最もセキュリティの高いとされているWPA2での暗号化を考えていた。これの設定画面がなかなか開けなかったのである。この親機を有線ネットワークで繋いで、親機の既存の設定のIPアドレス(198.168.2.200)をIE(= internet exproler)に打ち込むとHTML形式の設定画面が開け、そこで親機セッティングが出来るのだが、それがなかなか開けなかった。原因は設定画面を開こうとしているPCのIPアドレスが自動的に割り振られた「198.168.1.*」系だったからである。「198.168.2.200」を開くためには、設定画面を開こうとしているPCのIPアドレスが「198.168.2.*」系でなくてはいけないのだ。ネットワークをやっている人から見れば常識だと後から分かったのだが、自力でのセッティングではこういうところが苦労する。一度親機セッティング画面が開けたなら、その画面上で、親機のIPアドレスを「198.168.1.200」などに修正することで、自動的に割り振られた「198.168.1.*」系のPCからも設定画面を開くことが出来るようになる。なかなか良い勉強になった(参考①参考②)。

EStrongs File Explorer

Xperiaから無線LANネットワークを介してハードディスク(PC内の共有化HDDやNASなど)にアクセスするためには、もともと標準で入っているファイルマネージャーソフトではだめで、アプリケーションソフト(以下アプリ)をインストールしてやる必要がある。

当初アストロファイルマネージャーで目的の機能が得られるかと思っていたが、試してみたところ無理だった。この機能をサポートできるのは「EStrongs File Explorer」である。インストールして、wifi接続状態にした後、アプリを起動。NASのIPアドレスを入力して無事接続を果たした。NASの中にある画像データも見ることが出来たし、PDFも見ることが出来た。どうも3G回線-インターネット網経由でもストレージが見れるみたいなので、少しトライアルしてみても良いなぁと思っている。

ただし音楽ソフトのストリーミング再生には対応しておらず、ストリーミング再生ソフトの調査は引き続きしないといけない。

書籍電子化に関する記事まとめ(日経新聞等から)

日経新聞を読んでいると、電子化の話が大々的に取り上げられていた。いずれもiPadに代表されるようなタブレット型端末が今後隆盛するとともに、電子版の書籍がメジャーになってゆくという観測を基にしている。

実際、書籍は電子化される運命にあると思われる。詳しくは日経新聞に記事(電子書籍 元年 :特集 :日本経済新聞)を参照していただきたいが、英語圏における電子書籍の隆起とともにgoogleなどが既存書籍の電子化を推進しているのに対して、国内書籍会社が重い腰を上げたという形である。既存書籍出版社にとって出版業界の電子書籍化は、販売ルートの大幅な変更、マーケティングが前例なし・予想外のセールス展開となってしまうために、なるべくなら書籍マーケットの電子書籍化は避けて欲しいし、その変革が起こるならなるべく緩やかな方が良いというのが本音ではないだろうか?書籍の電子化には法的なグレーゾーンが多い(参考http://blog.livedoor.jp/businesslaw/archives/52029061.html)。だからこそ、aromaphiliaでご紹介した「電子書籍の衝撃:本はいかに崩壊し、いかに復活するか?」にも書いてあったことだが、やってしまった者勝ちという点もある。googleが始めてしまったからこそ、国内既存書籍会社はシェア奪還の意味も込めて電子書籍産業に表立って参入し始めた。

ユーザーにとっての書籍の電子化は、音楽の販売形態がCDのセールスからオンラインのダウンロード販売中心に変化した以上のインパクトを持つと、自分は考えている。たとえば書籍の内容を全文検索したり、本と本の情報リンク(PDF上での電子付箋の活用や、他のメモ系アプリケーションソフトの活用)を積極的に展開することで、従来の冊子体でのライブラリーよりも遥かにアクティブな情報活用ができると考えられる。冊子体のライブラリーではいかに自分が覚えているかが重要になるため、うろ覚えの情報を探す際に時間と労力を費やすことになってしまう。それに対して電子化されていればライブラリーからの資料作成など省力化、短時間化が見込める(たとえばこの人などは似たような事を考えているhttp://futuremix.org/2010/07/ebook-is-not-scanned-pdf-file)。また専門誌を購読する専門職の人にとっては、購読紙を電子化することで、欲しい情報へのアクセスが圧倒的に短時間化する(http://blogs.yahoo.co.jp/ponpoko6691535/32008400.htmlなど)。

かなり風向きの良い展開になってきているのが、電子機器メーカーや半導体メーカー。この夏は高機能携帯の展開が活発であったため、業績はかなり良かったらしい。今後は、高機能携帯に加えてタブレット型端末もその柱になってくるのではないか?(電子書籍、端末続々 サービス競争が加速 :日本経済新聞) また、矢野経済にも似たような報告があり、中身を閲覧してみたい(が今は無理)  2010年版 電子ペーパー市場の現状と将来展望 - 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所2010年版 出版社経営総鑑 - 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所など。

大学工学部等も電子化をにらんで、書籍の取り込み速度の向上や、精度向上を研究している。東大と大日本印刷の共同研究は結構有名(パラパラめくり書籍丸ごと電子化 大日本印刷と東大  :日本経済新聞)。また、書籍の電子化を進めると、盲目の人達への自動音声化サービスを省力化できるため、その研究も行われていたりする(http://fuji.u-shizuoka-ken.ac.jp/~ishikawa/newread.htm)。電子化においてはOCR過程が必要になるが、その問題が最もシビアに利いてくるのがこのような音声化サービス時のようだ。