電子書籍とプライベートクラウドに関して(新聞から)

電子書籍とプライベートクラウドに関して。新聞からの切抜きを集めてみる。

「シャープは27日、タブレット型の電子書籍端末を12月に発売すると発表した。新聞や、雑誌の定期配信サービスも同時に始める。」1)その名称が「GALAPAGOS(ガラパゴス)」だそうで…。個人的には皮肉屋としか思えないのだが…。それにしても端末もサービスシステムも立ち上げラッシュな感じを受ける。

しかし本当に欲しいのは著作権配慮や既得権層に過剰に配慮した不便なサービスではなく、自分の好きなときに自分の持ち情報を引き出して使えるシステムだと思う。「NTT東日本と西日本は、スキャンした書類データをパソコンを使わずにネット上に保存できるサービスを始める。専用の小型サーバーを10月1日から順次発売。スキャナーにつなげて利用する。データはスマートフォン(高機能携帯電話)など様々な端末で閲覧できる。」2)のだそうだ。実はこのような“プライベートクラウド”は著作権法ではグレーゾーンなのだという主張を見たことがある3)。その兼ね合いはどうなるのか?というか個人的にはオンライン閲覧が可能な電子図書館が欲しい4)

1. シャープ、電子書籍12月開始 日経など配信 :日本経済新聞
2. スキャンデータ、PC使わずオンライン保存 NTT東西 :日本経済新聞
3. 法的グレーゾーンである。今後再検討されてゆくものと考えられる。
http://blog.livedoor.jp/businesslaw/archives/52029061.html
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20100917_393769.html
4. 書籍のクラウド化は政府の仕事か? :日本経済新聞

関連する当ブログ内の記事
aromaphilia: 書籍電子化に関する記事まとめ(日経新聞等から)

バラの香り その②

学校の絡みでバラに関して纏めたので転記しておく。

植物としてのバラに関して
バラ属の植物は、灌木、低木、または木本性のつる植物で、葉や茎に棘があるものが多い。葉は1回奇数羽状複葉。花は5枚の花びらと多数の雄蘂を持つ(ただし、園芸種では大部分が八重咲きである)。北半球の温帯域に広く自生しているが、チベット周辺、中国の雲南省からミャンマーにかけてが主産地でここから中近東、ヨーロッパへ、また極東から北アメリカへと伝播した。南半球にはバラは自生していない。世界に約120種がある。

ばらの原種が地球上に誕生して以来、この原種の自然交雑から200余種の野生ばらが誕生したと考えられている。園芸植物となっているのは、主として次の野生種8種を先祖とし、それらの交配等で生まれたものである1)。この栽培ばらでの交配が重ねられ、オールドローズが生まれた。オールドローズは一季咲き性だが、花形だけでなく芳醇な香りを持つものも多くみられた。18世紀末に中国原産の四季咲き性のばらがイギリスに導入され、ヨーロッパ・アメリカさらに中近東にも広がり、ばらの園芸化がすすんだ。

約2000年前には早くもばらの栽培が始まっていたが、1867年に現在ある園芸品種ばら作出の基礎となったモダンローズ(現代ばら)が生み出され(1837年という説もある)、その後ハイブリットティー ローズ、フロリバンダ ローズ、ミニアチュアローズ、クライミング(つる性)ローズ等の園芸品種が出現した。モダンローズの中でも特に芳香性の強いハイブリット ティーローズなどの香りが6種類に分類されている2)

現在では鑑賞用として栽培されることが圧倒的に多いが、他にもダマスクローズの花弁から精油を抽出した「ローズオイル」は、香水の原料やアロマセラピーに用いられる。 花弁を蒸留して得られる液体「ローズウォーター」は、中東やインドなどでデザートの香りづけに用いられる。 また、乾燥した花弁はガラムマサラに調合したり、ペルシャ料理では薬味として用いる。 日本では農薬のかかっていない花弁をエディブル・フラワーとして生食したり、花びらや実をジャムや砂糖漬けに加工したり、乾燥させてハーブティーとして飲用することもある。

バラの香りと系譜図2), a)
新潟県長岡市 越後公園管理センターによると栽培品種の香りは次の6種類の香りに分類できる。

* ブルーの香り
ブルーの花色を持つ青ばら系の品種のほとんどが、この香りをもっています。この香りは主としてダマスク-モダンの香り成分とティーの香り成分が混在し、他にはない独特な香りを形成しています。(ブルーの香りをもつ代表的なばら;ブルー ムーン、ブルー パーフューム、シャルル ドゥ ゴール、ブルー ライト)

* ダマスク-クラシックの香り
皆さんが知っている、いわゆるばらの香りといえばこの古典的な香りでしょう。強い甘さと華やかさやコクを合わせ持っていて、心を酔わせる香りです。現代ばらには典型品種が意外と少なく、ティーやフルーティーの香りがやや強く出る傾向があります。(ダマスククラシックの香りをもつ代表的なばら;芳純、香久山、グラナダ、香貴)

* ティーの香り
ダマスク系の香りとは全く異なる特有の香り成分を含有しています。香り立ちは中程度ですが、上品で優雅な印象を与えます。現代ばらの品種に最も多くある香りです。ハイブリットティーローズの多くには量の多少はあるものの、このタイプの香り成分を含有しています。(ティーの香りをもつ代表的なばら;ガーデン パーティー、ディオラマ、秋月、天津乙女)

* ダマスク-モダンの香り
ダマスク-クラシックの香りを受け継ぎながら、香り立ちは強くより情熱的で洗練された香りです。ダマスク-クラシックとは含有する成分のバランスが異なっているために香りの質も違って感じられます。比べてお楽しみ下さい。(ダマスク-モダンの香りをもつ代表的なばら;パパ メイアン、レディラック、シャルル マルラン、マーガレット メリル)

* フルーティーの香り
ダマスク系およびダマスク系の香りが変化した成分が多く含まれ、さらにティー系の特徴成分がいろいろなバランスで混在した香りを持つことが特徴です。ピーチのような香りや、アプリコット、アップルなどの新鮮な果実の香りが想起される香りです。(フルーティーの香りをもつ代表的なばら、ダブル ディライト、フリージア、マリア カラス、ドフト ゴールド)

* スパイシーの香り
ダマスク-クラシックの香りが基調ですが、丁字(クローブ)ようの香りがやや強く感じられスパイシーな香りが特徴です。(スパイシーの香りをもつ代表的なばら;粉粧楼、デンティーベス、ロサ ルゴサ、ロサ ルゴサ アルバ)

香粧品にとってのバラの香り
花の香り、その製油の香りは植物の品種、生産地(テロワールのようなものと考えても良い)にかなり依存しており、生花店に流通しているローズは、香料におけるバラの香りとは異なる匂いである。仮に栽培品種を大量に集めて精油抽出しても同じ香気のオイルは得られないだろう。生花店にて売られているバラは品種交配によって痛みにくく、望みの色の大振りの花を咲かせるように品種改良されている。鉢植えのものでも、四季咲き性(季節を問わず花が咲く性質)を持たせたりされている。香料における典型的なバラの香りとは、ブルガリアで栽培されているダマスクスローズの香りである3)

誰もが認める典型的な天然香料原料は、
① ブルガリア(またはトルコ)産のRosa damascenaの花弁から水蒸気蒸留によって得られるRose oil (Otto oil, Rose ottoという名前で呼ばれることもある)
② モロッコ(またはエジプト)産のRosa centifoliaの花弁から溶剤抽出によって得られるRose absolute
である3)

大昔からローズは高級の代名詞である。香水の骨格において調香上の重要なポイントになることが多く、高級な香粧品においてローズの香りがポイントになることも多い。バラの香りは香粧品業界では王様ような、別格の存在である。だが、現在においては天然単品香料を安定的に入手するのは困難であるし、原材料費も高価になってしまう。特にバラに関しては採油率が低いこともあって、天然原料は高級である。そのために良いベースコンパウンドを開発することが古くから求められてきたといえる。

既存で優秀なベースコンパウンドには
· Rose VE
· Rose 1611
· Rose 61
· Wardia
などがある。

バラの香りと香気分析、微量ストロング素材b)
ローズの(生花の)香気分析もコンスタントに続けられており、フレグランスジャーナルのような香粧品雑誌にも定期的な研究成果の報告がなされていたりする。たとえばローズオイルからは微量成分として多くの合硫化合物が発見されている。ローズ調香においては微量香気成分がキーノートになっている場合もおおく、たとえばローズのトップ感を引き立てるのに有用な特徴成分として2-メチルチアゾールが発見されている。関値は0.1ppmを示し,フローラルなグリーン調の香りにほのかなフルーティー香気を有すとされる4)。安全性.環境問題などから,香料の使用規制問題もきびしくなり、新規香料素材においても,安全性の基準や開発コストの観点などから汎用香料の開発はハードルが高くなりつつある。そのような観点から,個性的で閥値も低く強力な匂いを持つ香料化合物を,極小量使用して差別化を行うという考え方もトレンドになりつつある。今後新素材開発においても,小量ストロングの香料物質の開発研究が今まで以上に盛んになると思われる。

ローズ調香は精密香気分析とストロング単品香料の精密使用の最先端の舞台であると思われる。今後も精密香気分析や新規素材の動向に注意を払う必要があると考えている。

参考
1. バラ – Wikipedia
2. ばらの香りと系譜図|国営越後丘陵公園(新潟県長岡市宮本東方町字中山1921-2 越後公園管理センター HP)
3. 香りの百科 日本香料協会 朝倉書店 p.453
4. サルファーケミカルズのフロンティア, 中山重蔵, 山本健(他), シーエムシー出版(2007) (特に含硫黄有機化合物に関して纏められている)

a. aromaphilia: バラの香り
b. aromaphilia: 硫黄の匂い、「サルファーケミカルズのフロンティア(CMC 2007年3月)」

魚の匂いと和食の調理技術

雑誌「香料」は香りの周辺知識をこまめに特集していて、香料・調香の役に立ちそうな記事が多い。バックナンバーを見ていたらいくつか気になる記事があった。たとえば… 調理文化とスパイス、香気嗜好性の研究に使えないかと、かなり興味を持った記事1)

この記事で大々的に取り上げられている事項は、「魚肉に関する正常な筋肉の死後変化とpH変化」、「魚介類のATPの変化」これから導かれる「魚の鮮度とアミノ酸含有量」である。結論を端的に纏めてみると、魚の死後すぐは魚肉の旨み成分は少ないが、ある程度時間を置くことで旨み成分量が向上するという。たとえば鰹は水揚げ直後よりも、朝市場に並び、それが夕方食卓に並ぶ頃に最も旨み成分含有量が向上するというのだ。ただし食感や歯ごたえに関しては水揚げ直後のものの方が良好な場合もあるから、刺身とは別の活〆というカテゴリも存在する。日本は古くから魚を食べる文化を持っており、それが魚を最もおいしく食べる調理文化を熟成させた。図3では「鮮度と料理法の関係」について言及されており、最も美味しく食べる調理文化が和食にあることを主張して論は締めくくられている。

香料に興味を持つものとしては、魚の経時変化的なオフフレーバー発生の度合いとその香気成分の帰属がほしい。オフフレーバーとは「好ましくない臭い」のことで、油脂やビール香気の酸化した香気や未熟の果実のグリーンノート、肉・魚の腐敗臭はオフフレーバーである。この論文にえがかれている「魚の熟成」はおそらくオフフレーバーの発生を少しは伴っていると考えられる。しかしながら美食家にとっては多少のにおいの強さはよりも「旨さ」が優っているのだ。匂いに慣れてしまえばその食材は旨い。「オフフレーバーを我慢すれば美味しく食べられること」は、高頻度でその食材を食べる機会のある人々の共通認識になり、程よいオフフレーバーは意識されることは無くなり、その感覚はその地方(魚が取れて、よく食卓に上る地方)の食文化として固定化する筈だ。かくして変な匂いを好む文化が確立する。

あわせて考えたいのはスパイス・薬味の使用だ。盛大なオフフレーバーを発生させる食材は、その匂いを打ち消したり、誤魔化したり出来る匂いの強い微量の食材と組み合わせて食べられる。たとえば鰹の刺身は表面を焼き(タタキにして)、柑橘果汁の入った醤油、生姜、葱、茗荷、大蒜などを添えて食べる。青みの魚は臭いが出やすい。それを薬味によって打ち消しているのだ。これらの伝統的薬味の香気と経時的に増加してくる魚の香気を分析すれば、新しい香りの文化の一側面が描けると思う。

この話は魚にかぎらず、肉に関しても同様のことがよく言及される。ヨーロッパで多くの香料が必要とされた背景には熟成され、盛大なオフフレーバーが発生している肉類を沢山食べていた点が上げられる。この腐りかかった肉の臭みを消すために葱類の植物や、ニンニクやコショウのような香辛料、あるいはハーブを用いた料理が発達した。

1. ‘最近の魚食事情(成瀬;鎌倉女子大)’ 香料No.213, H14(2002), 3月号, p.99

香料原料開発

香料原料の開発は、主に有機合成からのアプローチとしてなされる。世界的にはフィルメニッヒ、日本国内では高砂が合成系に強い香料会社といわれている。

さて香料に限らず、新規化学物質を市場に出すためには安全性(有毒かどうか)や環境への影響(作る工程の確立時にもプロセス自体の安全性や環境負荷も問題となるが、その話はおいておく)を明確にして、国内法に合致したプロセスを立ち上げて製造することになる。またその原料が明確なパフォーマンスを示すかどうかは莫大な投資をする会社にとって重大な関心事で、その商品候補の新規化合物は厳しく吟味されることになる。このような2つのハードルのために、有機合成系の研究者が提案した新商品候補や製造法の候補のうち、プロセスとして立ち上がり、日の目を見るのは極々一部だけである。

上記のプロセスを考えてもらえば分かるように、香料のケミカル開発は製薬の開発と似ている。日経新聞を読んでいて、気になる記事に「日揮」の記事があった1)。日揮は化学プラントの設計と立ち上げ支援をする会社。製薬系の製造技術はバルク商売の化学工業とは結構異なると考えられるのだが、プラントノウハウや触媒技術に関しても積極的に社内資本として整備しようとしているのだなぁ、と一連の記事を見ていて感じられた。

合成屋としての能力が低い香料会社が新規化学物質での商売に手を出そうとした場合、新規化合物の選定に関しては、特許調査・学会調査とコネクションを利用した入手・大学研究室を使った試験的合成から何とかなるだろうが、特許買取後に安全性確認や環境負荷の評価、それらがクリアされるとプラント設計と製造設備が問題になってくる。そのような際、製薬系についてもノウハウを持つ会社が設備立ち上げとプロセス設計のブラッシュアップに参与してくれるなら、結構良いものが立ち上げられうのではないかと思う。実際にはこのような会社との付き合いをしたことは無いが、注意して情報収集してみたいなぁと思っている。

1. 日揮、医薬開発支援事業を拡大 東京CROを買収 :日本経済新聞

やはり化粧品は今面白い

国内化粧品メーカーの業績は案外良いようだ。花王、資生堂といった国内メジャーメーカーが軒並み海外展開に攻勢を掛けている1)

世界的なBRICsに登場しつつある富裕層。またこれらの国はアメリカのサブプライムローン問題、ギリシャの財政問題に端を発したユーロ圏の不況の悪影響を受けつつも立ち直りは早いと分析されている。

政情不安定だった国が安定化し、所得が向上してくる際に起こることは文化レベルの向上である。化粧品・香粧品・トイレタリー製品は文化的な生活に欠かすことは出来ない。例えばインスタント食品や外食といった食品産業の利鞘の大きい部分は「手間の節約」や「贅沢品」であって文化的な生活にとって「無くても何とかなるもの」である。それに対して、シャンプーや石鹸、衣類洗剤は文字通り最低限文化的な生活に必要な製品である。また、ある程度生活水準が向上すると、化粧品に対する購買意欲が発生すると言われている2)

食品産業は地域柄やローカルな食文化が色濃く反映されるため、大規模な商品展開が実現しにくいが、香粧品は地域差・文化差の影響がそこまで大きくなく、大規模な商品展開が可能になる。だが、化粧品、香粧品に関しては製造技術やノウハウの蓄積が必要なのも確かで、開発力それにくわえて販売とトレンドリサーチがかみ合った戦略が必要である。

なお本日、政府が円高介入をした3)が、海外進出や海外の技術保有メーカーの買収などには円高の方が良いはずで、きちんと体力がある企業であれば円高時には海外投資、拠点の確保に費用と時間を費やし、円安時には日本国内の投資、販売攻勢を強めるなどするのが良いだろうと思う。民間人レベルでも今こそ高額海外製品の購入を計画する人が多いと言うので、円高も良し悪しだと思うのだが。

1. (例えば新聞記事だったらこの辺かな、日経ビジネスでも何度か取り上げられていた)
資生堂、グルジアで化粧品販売 10月から :日本経済新聞
4911 (株)資生堂 (資生堂) 日本経済新聞マネー・マーケットonline:日経会社情報 -ニュースショット- (等)
2. (この辺を見ればよいはず、成書でもこの傾向を指摘しているものは沢山あるはず)
トイレタリー市場に関する調査結果 2010 – 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
2010年版 化粧品マーケティング総鑑 – 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所
3.
政府・日銀、日欧で単独介入 円売り1兆円規模に :日本経済新聞

科学検証されていない医療

ホメオパシー療法に関して、新聞に取り上げてあった1)。ホメオパシーとは何なのか、近代医療とはどのように異なるのか、他の民間療法とはどのように異なるのか、関連性はあるのか、についてまとめておくことにする。予めお断りしておくが、筆者は医療従事者でもなく、民間療法の施者でもない、ただしこのカテゴリーは香料ともかかわりの深い分野である(詳細後述)ために事態の展開に並ならぬ関心があると同時に、状況把握と各者の意見を正しく把握したいと思うのである。

さて、そもそもホメオパシーは薬剤の使用方法の一種だと言え、病状と同じ作用を発する薬剤を処方するという投薬という考え方がそもそもの基礎にある2)。実はこのような投薬の仕方は民間療法には良く見られ、「近代医学において、病気の症状を抑制する方向の投薬をするのとは対照的」と評される。現在問題になっている点はホメオパシーの薬剤の中には著しい低濃度まで希釈された薬剤や、無機化合物が含まれ、現代薬学における薬効が確認できていない点、(一部で)ホリスティックな効用説明を繰り返している点、(特に貧困地域で)実際の効用が確認されないまま現代医学の代替医療になりつつあること(治癒効果は上っていないのに広がっていると言う報告がある)である。

もともと、民間療法はホリスティックな面と経験的な帰納的な施術という2面を持っている。漢方薬もそれまで積み重ねられてきた経験知がその漢方薬学の基礎にあるのだが、その病理解釈や診断基準は近代科学と相容れない部分もある。これが鍼灸や気孔になると、さらに民間療法と近代科学の相容れない部分は大きくなる。医学を科学的に裏付けることはとても難しいことなのだし、伝承されてきた民間療法を完全には否定できないが、効用が確認できない施術が蔓延するのも困るのではないか、と自分は考えている。

香料によって体の調子を良くなる、という現象は古くから知られていて、植物の精油を民間療法はアロマテラピーと称される。ストレスの多い現代人にとって、睡眠の質を改善したり、疲れた頭を休ませたり精油や香りを使った癒しの時間は重要な役割を果たし始めている。だがアロマテラピーは、統一的な解釈を与えられているわけではない民間療法に過ぎない。心理学的アプローチや脳科学的なアプローチ、あるいは抗菌効果や殺菌効果の評価は地道に進められており(この分野はアロマコロジーと言う名前で呼ばれることが多い)、効能も確認されている。その反面、効能をホリスティックに解釈する人もいる。まさに、「統一的な解釈を与えられているわけではない」状態だ。

筆者としてはホリスティックな感覚をもっていることも人間にとっては必要かもしれないし、科学が万能なわけではないから、全てが科学的に説明できるとも主張できない。だが、この医療界を中心としたこの動向は注視し、香りと人間の関係性を考える際にも一考するべきかなと考えてる。アロマコロジー、アロマテラピーの効果についてはまた改めて書くことにする。

参考;
1. 
東京都、ホメオパシー業者に立ち入り 薬事法違反の疑い :日本経済新聞
ホメオパシー「根拠なし」に賛成 日本医師会など :日本経済新聞 …等

2.
Amazon.co.jp: ホメオパシー医学への招待―現代医学を超えた21世紀の代替療法: 松本 丈二: 本(出版社)
Amazon.co.jp: ホメオパシー入門: 永松 昌泰: 本

流行30年周期説? 短周期化しているのではないか?

流行30年周期説というものがある。服・モノ・コトなどの「流行」が30年の周期を持っているという説だ。例えば’00年代には’70年代のリバイバルが受けるとか、’10年代には’80年代のファッションが再流行るのではないかという予測が立てられるというものだ。だが、現在ではそれよりも短い周期なのではないかという説が提示されている。

歌謡曲・アイドルの流行に関する番組で、今までの流行を格好良い⇔可愛らしい、男ウケ⇔女ウケという2軸の切り口で特長を分析して流行を解析した結果、スパイラルを描いているという結論を番組側は用意していた。だが自分にはそのスパイラルの周期がだんだんと短くなっているような気がしてならなかった。流行はだんだんと極端化、短周期化しているのか?

「流行が極端化、短周期化している」こう解析できると思うので、まずはその原因を推測してみることにする。
1. 情報化…データのデジタル化とインターネットによる多種多様な情報のオンライン化によって、今までの流行が高精度に閲覧できるようになった。
2. 流行の訴糾力が低下している…流行に対する憧れがなくなっている現代、減っているフォロワーを再び振り向かせるために極端に特色を演出することが必要になっている
3. 陳腐化するまでの時間が短い…情報伝達速度が高速化しているためにすぐに陳腐化してしまう。特にリバイバルは根本的に新しいものではないのですぐに新鮮さが薄れる。

だがそれは新しいものを提案できなかったことと繋がっているのではないか。新しいものを発信するということは、今までになかった新技術を実用化してその実用性を問うという面と、今までになかった意匠を実用化しその美を問うという面がある。ものが充足してしまっている現代、どちらかだけでは片手落ちなのだ。今まで(1990年代くらいまで)の大流行が、衣食住の充足化を伴うものだったからこそ、大流行の形式をとったのであって、そこに真のクリエイティブがあったことの証明にはならないと考えている。作れば売れた時代には、新技術を実用化してその実用性を問うという面と、今までになかった意匠を実用化しその美を問うという2つの課題は二の次となっていた。現在は衣食住は充足している。もはや完成してしまったユーティリティを維持、必要な部分を取替・刷新すればよいという状況になっているのだ。ここに来て大きなムーブメントを作り出すためには、今までになかった新技術を実用化してその実用性を問うという面と、今までになかった意匠を実用化しその美を問うという面の両面を満たすもののみが生き残れるという状況を呈し始めている。

何が表層的なトレンドフローなのだろう?そして何がトレンドフローの深部に潜むものなのだろう?それを俯瞰し見出したいものである。

関連記事
aromaphilia: 「嗜好の多彩化」と従来の「記号的文化消費」についてのメモ
(後日記事内容修正します)

立つ香り、沈む香り

調香のセンスの一環になるのだが、「立つ香り」というものがある。香りが立つこと、拡散力があること、パワーがあることについて考察してみる。

トップノート、ミドルノート、ラストノートという次元以前の話になるが、調香の世界では少しでも強い香りが好まれる。少量付けただけでも、明確にそれと分かる香り、飛び出してくる香り、部屋中に広がる香り、他の匂いをかき消して良い匂いにしてくれる香りというものが求められている。香水のようなピュアフレグランスならいざ知らず、シャンプーや石鹸のような元々良い匂いではないもののを出来るだけ少量の香料で基材の匂いを塗りつぶし、良い香りの香粧品に仕上げないといけない。そこで重要になってくるのが立つ香りである。

また別の面もあって、立つ匂いは、良い香りとも別の次元の話である。あまり良い匂いとは言えず、人によっては「臭い」と感じてしまうような立つ匂いもまた作れるし、多くの人が「良い匂い」と評しつつも立たない匂いも作れる。しかし、立つ匂いは「立つ」というだけで十分な利用価値がある。例えば洗剤などは「いつまでも嗅いでいたい」と思わなくても、洗濯中に「綺麗になっている感」があって、洗い上がりにほんのりとした残り香がしていれば良い。洗濯中に広がる洗剤の匂いが弱かったり、洗剤の原料の臭いがしたりしてはいけないのだ(正確に言うと国・文化によって相対的に強い匂いが好まれたり、強すぎる匂いが好まれなかったりという差は生じてくるのだが)。

さらに話は続くのだが、お金を掛けたから立つ良い匂いが作れるというわけでもない。洗剤の話とも重なるのだが、材料費が安くても立つ匂いが作れたりする。また天然原料の使用の有無も理論的には関係がない(天然原料はそれ自体が「立つ」匂いであることが多いので、「立つ」香りを調香し易くなる)。

色々試しては見るが、良い香りになる代わりに自分の調香した香りが沈む香りになり始めたり、難しい点は多い。現在色々と試して見る際の、留意点の一つである。

MARANTZ – NETWORK AUDIO PLAYER – NA7004 日本向け正式発表

以前このブログで話していたMARANTZ NA7004が国内向けに正式発表された。発表会は恵比寿にある試聴室で実施されたらしい。

参考—-
マランツの「2010年9月7日 新製品発表資料」
ASCII.jpの記事「ASCII.jp:マランツ、ネット対応の高音質プレーヤー「NA7004」を発表」
HiViの記事「マランツがオーディオ心をくすぐるネットワークオーディオプレーヤーNA7004を発表!」
Phile-webの記事「マランツ、ネットワークオーディオプレーヤー「NA7004」を発表 – Phile-web」

発表資料や上記の専門誌のアナウンスを見てみると、i-Pod touch / i-Phone系のGUIから無線LANネットワーク経由で操作できたり、ファイル形式がFLACにも対応していたりと、かなりLINN DS(Digital Stream)のシステムを意識したのだろうなぁ、と思った。だがNA7004はそれに加えて、USBでPCと繋いで外付けオーディオインターフェース的な使い方をしたり、USBメモリーを直接挿してその音楽データを読み取ったり、i-Pod touch / i-Phoneをマウントしたりという多彩な使い方が可能なようだ。

インターフェースは
①イーサネット…有線LAN・DLNA1.5準拠として振る舞い、NAS上の音楽データやインターネットラジオを再生したり、Webコントロール(i-Pod touch / i-Phone等を通じた機器コントロール)、ファームウェア・アップデートの役割
②USB…PCと繋いで外付けサウンドインターフェース的な使い方、つまりPCからのデジタル音声信号をNA7004のD/Aコンバーターによってアナログ変換し、PCからの再生をサポート。またはiPod/iPhoneとデジタル接続し、音楽信号をデジタルのまま出力、NA7004のD/Aコンバーターによってアナログ変換する再生をサポート。
③デジタル入力(同軸、光角型)
④RS-232C
⑤Bluetoothレシーバー用接続端子
特に目に付いた装備はこんなところ。

今後はミドルレンジでの単品DLNAプレイヤーが後に続いてくれるのではないだろうか?特にこの価格帯での映像ストリーミングもサポートできるHDMI+5.1CH(今のハイエンドは8.1CHだっけ?うろ覚え…)で、ピュアオーディオで使っても楽しいというような単品DLNAプレイヤーが後に続いてくれたら嬉しい。まぁ現物を見て、聞いてみたいです。

個人ブログでも紹介されている
http://hotworks.wordpress.com/2010/05/07/marantz-na7004/
http://blog.goo.ne.jp/gikyusan/e/86e15b24df5c04ff8db6b8639339e0b7
http://blog.livedoor.jp/hotworks/archives/51514964.html
http://ayuchin.blog11.fc2.com/blog-entry-1132.html
など

<追記①>
既存で、この分野の商品に近いものとしては
パイオニアのSACD/DLNAレシーバ「PDX-Z10」
がありました。アンプ+SACDプレイヤー+DLNAプレイヤーという構成です。  
(参考;報道資料 : パイオニア株式会社

<追記②>
同時期の家電ショウで
ヤマハ「NP-S2000」の日本国内向け発売も報道されていました。
バランス出力付DLNAプレイヤー(iPhone/Web操作可能)という構成です。  
(参考;ネットワーク上の音楽ライブラリーを高音質再生する、ピュアオーディオグレードの"ドライブレス"HiFiプレーヤー。 ヤマハ ネットワークプレーヤー『NP-S2000』

セスキテルペンの香料

天然の香気物質の中でも炭素数15個の化合物は大まかに言って木の匂いのするものが多い。

木というと森の香り、栗の木の匂いやフィトンチッドに代表される針葉樹林の清々しい匂いを思い浮かべる人もいるだろうが、今回話題として話したい匂いは、木とは言っても新品のヒノキ材の匂いとか、おが屑の匂いのほうだ。

この木材の匂いは香料的には「ウッディ」という言葉で表現される。アロマテラピーで、同系等の匂いが「アーシー(土的)」とも表現されることもある。

このタイプの香りの香料はほとんどが天然だ。というのも、セスキテルペン類ともなると分子量が高くなり、沸点が高くなるために精製が困難になる。仮に合成ルートがあったとしても合成後の精製作業が出来なかったり、天然から単離してくるにしてもせいぜい水蒸気蒸留を用いるのがせいぜいだったりする。目的物質の精製方法としては、実験室レベルではカラムクロマトグラフィなどの分離抽出方法があるが、商業レベルでは単価の著しい上昇を伴ってしまうために採用できない(医薬品などは例外)。ちなみに商業レベルで用いられる方法としては、再結晶、蒸留(分留)、抽出がある。というわけで、ウッディ香料の中心は天然から抽出した香料、またはそれを出発物質にして化学修飾した合成香料になる。天然の代表例としては、パチュリオイルやベチバーオイル、サンダルウッドオイルやヒノキオイル等など(またそれぞれを単離精製したものもある。合成タイプ(化学修飾したタイプ)としてはVertfix (Coeur) やiso-E superなどが有名だ。

セスキテルペンの中にはウッディではない香調の物質もある。ある特定の構造を持つ香料は明らかにウッディと異なる香調をもっていたりするのだ。たとえばダマスコンという香料物質はカシスのような重たい甘い香りを持っている。ちなみに異性体によって少しずつ香調に差がある。基本的にはウッディ香調だった化合物群うち、特定の化学構造を持つものの香りがウッディではない特異的な香調を発現するのである。

このような合成香料のターゲットモデルの選定は、実のところ学術の世界にもほとんど出てこない。しかしそこには何らかの理化学的アプローチが可能なはずであって、個人的にはとても知りたいところだ。

(未完成記事…後日記事内容修正します)