バラの香り

バラの香りは香粧品業界では王様ような、別格の存在である。大昔からローズは高級の代名詞であって、高級な化粧品はローズの香りをつけたものが多い。ローズの(生花の)香気分析もコンスタントに続けられており、フレグランスジャーナルのような香粧品雑誌にも定期的な研究成果の報告がなされていたりする。

ローズの精油のとり方は、アブソリュート法と水蒸気蒸留法がある。アンフルラージュ法も存在するが、香気的にはアブソリュートに繋がるものであるので市場にはないと考えてよい。

見過ごされがちだが、花の香り、その製油の香りは植物の品種、生産地(テロワールのようなものと考えても良い)にかなり依存しており、生花店に流通しているローズは、市販のアロマオイルとは異なる匂いであるし、仮に大量に集めて精油抽出しても同じ香気のオイルは得られないだろう。生花店にて売られているバラは品種交配によって痛みにくく、望みの色の大振りの花を咲かせるように品種改良されている。鉢植えのものでも、四季咲き性(季節を問わず花が咲く性質)を持たせたりされている。
精油は原種に近い品種から得られる。そのために自分としては品種に関して、品種改良史に関して知りたいなと思っていた。以下のような本があったら詳しく調べることが可能ではないかと考えている

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BA%E8%8A%B1%E5%9B%B3%E8%AD%9C-%E9%87%8E%E6%9D%91-%E5%92%8C%E5%AD%90/dp/4093055033/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1282010479&sr=8-1
より
オールド・ローズ花図譜 [大型本]
野村 和子 (著)
# 大型本: 337ページ
# 出版社: 小学館 (2004/03)
# ISBN-10: 4093055033
# ISBN-13: 978-4093055031
# 発売日: 2004/03
# 商品の寸法: 26.2 x 19.2 x 2.8 cm

バラの香りと系譜図

新潟県長岡市宮本東方町字中山1921-2 越後公園管理センターのサイトでは香りから栽培されているバラの分類を試みています。
http://echigo-park.jp/guide/flower/rose/fragrance/index.html
それによると「香りのばら園」の「香りのエリア」は次の6種類に分類されています。なおこのサイトでは系譜図などもあり、栽培品種のバラの香りを考えるためには有用と思われます。

* ブルーの香り
ブルーの花色を持つ青ばら系の品種のほとんどが、この香りをもっています。この香りは主としてダマスク-モダンの香り成分とティーの香り成分が混在し、他にはない独特な香りを形成しています。(ブルーの香りをもつ代表的なばら;ブルー ムーン、ブルー パーフューム、シャルル ドゥ ゴール、ブルー ライト)

* ダマスク-クラシックの香り
皆さんが知っている、いわゆるばらの香りといえばこの古典的な香りでしょう。強い甘さと華やかさやコクを合わせ持っていて、心を酔わせる香りです。現代ばらには典型品種が意外と少なく、ティーやフルーティーの香りがやや強く出る傾向があります。(ダマスククラシックの香りをもつ代表的なばら;芳純、香久山、グラナダ、香貴)

* ティーの香り
ダマスク系の香りとは全く異なる特有の香り成分を含有しています。香り立ちは中程度ですが、上品で優雅な印象を与えます。現代ばらの品種に最も多くある香りです。ハイブリットティーローズの多くには量の多少はあるものの、このタイプの香り成分を含有しています。(ティーの香りをもつ代表的なばら;ガーデン パーティー、ディオラマ、秋月、天津乙女)

* ダマスク-モダンの香り
ダマスク-クラシックの香りを受け継ぎながら、香り立ちは強くより情熱的で洗練された香りです。ダマスク-クラシックとは含有する成分のバランスが異なっているために香りの質も違って感じられます。比べてお楽しみ下さい。(ダマスク-モダンの香りをもつ代表的なばら;パパ メイアン、レディラック、シャルル マルラン、マーガレット メリル)

* フルーティーの香り
ダマスク系およびダマスク系の香りが変化した成分が多く含まれ、さらにティー系の特徴成分がいろいろなバランスで混在した香りを持つことが特徴です。ピーチのような香りや、アプリコット、アップルなどの新鮮な果実の香りが想起される香りです。(フルーティーの香りをもつ代表的なばら、ダブル ディライト、フリージア、マリア カラス、ドフト ゴールド)

* スパイシーの香り
ダマスク-クラシックの香りが基調ですが、丁字(クローブ)ようの香りがやや強く感じられスパイシーな香りが特徴です。(スパイシーの香りをもつ代表的なばら;粉粧楼、デンティーベス、ロサ ルゴサ、ロサ ルゴサ アルバ)

バラの系譜

ばらの原種が地球上に誕生して以来、この原種の自然交雑から200余種の野生ばらが誕生したと考えられています。約2000年前には早くもばらの栽培が始まっていました。

この栽培ばらでの交配が重ねられ、オールドローズが生まれました。オールドローズは一季咲き性ですが、花形だけでなく芳醇な香りを持つものも多くみられました。18世紀末に中国原産の四季咲き性のばらがイギリスに導入され、ヨーロッパ・アメリカさらに中近東にも広がり、ばらの園芸化に大きく貢献しました。

1867年に現在ある園芸品種ばら作出の基礎となったモダンローズ(現代ばら)が生み出され(1837年という説もあります)、その後ハイブリットティー ローズ、フロリバンダ ローズ、ミニアチュアローズ、クライミング(つる性)ローズ等の園芸品種が出現しました。モダンローズの中でも特に芳香性の強いハイブリット ティーローズなどの香りが6種類に分類されております。

参考書リスト
オールドローズと現代バラの系譜 (単行本)
バラの系譜編集委員会 (編集)
# 単行本: 216ページ
# 出版社: 誠文堂新光社 (2009/04)
# ISBN-10: 4416409052
# ISBN-13: 978-4416409053
# 発売日: 2009/04

wikiも結構詳しいです
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%A9

「食品・化粧品・医療分野へのゲルの利用 (新材料・新素材シリーズ)  シーエムシー出版 (2010/05)」

ゲル状態は食品や香粧品には欠かせない概念である。食品でいうと、ゼリーや蒟蒻がゲル状態の物質である。ゲル状態は弾性があり、多量の溶剤(食品の場合はほとんどが水)を含んでいる。

液体の吸収・保持機能がある、固体と液体の中間的力学強度を持つ、というのがゲルの特徴である。なぜこのような特徴を有するのかというと、「分子や粒子がネットワークを形成し、三次元の網目中に流体を含んだ状態および材料」だからである(「3rd現代界面コロイド化学の基礎(日本化学会・丸善2009)」より)。

ゲルは化学ゲルと物理ゲルに分類される。

化学ゲルは高分子間を共有結合で直接架橋することでネットワークを形成したものである。特に有名なものが、オムツに用いられている吸水性樹脂で、親水性高分子に少量の架橋剤を反応させたものである。物理ゲルは高分子間を直接共有結合を形成するのではなく、高分子間に働く水素結合や疎水性相互作用のような非共有性の物理的引力相互作用に寄って架橋点を形成している。自然界に存在するゲル、ゼラチンや寒天ゲルは物理ゲルがほとんどである。

架橋点の形成方法により様々なゲルを形成することが可能だが、実用化されているゲルは限られている。その理由は生体安全性(皮膚接触、経口毒性など、主ポリマーに関してまたは残存微量成分に関して)、生分解性(環境放出した際微生物によって分解されうるか)、魚毒性など解決すべき課題が多くあるからである。現在実用化されているゲルは多くが生体由来、もしくは20世紀前半の化学合成ともに現れてきたポリマーを利用するものであって、上記の問題から新規ゲル材料はなかなか参入できないようだ。だが、ゲルに関して知らずにはトレンドに即応した食品や香粧品の開発が出来ないことも事実。工学的にはこのCMCの本あたりが頭に入っていたらよいなぁ、と思う。

ちなみに入門編は(「3rd現代界面コロイド化学の基礎(日本化学会・丸善2009)」の3章「ゲル‐材料、性質、機能」あたりでよいのではないかと思う。なお理学研究にとってはゲルはとても面白い素材である。物理化学的な理論研究、あるいは新規機能性ゲルの開発をする超分子化学両面からのアプローチがあるが機会を改めて詳述する。

http://www.amazon.co.jp/%E9%A3%9F%E5%93%81%E3%83%BB%E5%8C%96%E7%B2%A7%E5%93%81%E3%83%BB%E5%8C%BB%E7%99%82%E5%88%86%E9%87%8E%E3%81%B8%E3%81%AE%E3%82%B2%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%88%A9%E7%94%A8-%E6%96%B0%E6%9D%90%E6%96%99%E3%83%BB%E6%96%B0%E7%B4%A0%E6%9D%90%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA-%E9%87%91%E7%94%B0-%E5%8B%87/dp/4781301983/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1282005106&sr=8-1
より
食品・化粧品・医療分野へのゲルの利用 (新材料・新素材シリーズ) [大型本]
金田 勇 (監修), 西成 勝好, 長崎 幸夫, 梶原 莞爾
大型本: 245ページ
出版社: シーエムシー出版 (2010/05)
ISBN-10: 4781301983
ISBN-13: 978-4781301983
発売日: 2010/05

参考入門書
http://www.amazon.co.jp/%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E7%95%8C%E9%9D%A2%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89%E5%8C%96%E5%AD%A6%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E-%E5%8E%9F%E7%90%86%E3%83%BB%E5%BF%9C%E7%94%A8%E3%83%BB%E6%B8%AC%E5%AE%9A%E3%82%BD%E3%83%AA%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3-%E7%AC%AC3%E7%89%88-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8C%96%E5%AD%A6%E4%BC%9A/dp/4621080873
より
現代界面コロイド化学の基礎 原理・応用・測定ソリューション 第3版 [単行本]
日本化学会 (編集)
単行本: 486ページ
出版社: 丸善; 3版版 (2009/4/18)
言語 日本語
ISBN-10: 4621080873
ISBN-13: 978-4621080870
発売日: 2009/4/18

超入門
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%AB

日本デオドール 石川氏、大嶋氏

J-waveに臭気判定士がゲスト出演して話をしていた。人をひきつける匂い、好きな匂いは何ですか?無臭空間が好まれていたが、最適な匂いが好まれるようになった、など面白そうな話を結構していた。臭気判定士・大嶋理恵子氏は日本デオドールのスタッフ。

日本デオドール・臭気判定士・石川英一氏のブログが公開されている(http://nioinojikenbo.blog.smatch.jp/)。会社HPはhttp://www.deodor.co.jp/

Seiko; lord marvel


居候先の家主である叔母が、福岡に帰省してもらってきたのが、祖父の遺品のこの時計。文字盤が大きく、視認性が良いから少し手直しをして使いたいとのコトだった。

読み取れる文字から検索をかけてみると、機種名は「seiko lord marvel」だった。

セイコーの手巻きとしては高級な機種で、3針式のシンプルなフェイスにラウンドカバーガラス、自動巻きではないので結構薄いが、それなりに存在感のある口径である。ムーブメントは初代が5振動、後期が5振動または5.5振動、異色のモデルとして後期のモデルの後に「seiko lord marvel 36000」という10振動モデルがあった。10振動モデルはセイコーマニアにとってはかなり有名なモデルだと思う。10振動モデルならずとも精度がかなり高いシリーズだったらしい。「seiko lord marvel」はセイコーがはじめて「高級腕時計」とした出したモデルであり、その後king seiko やgrand seikoが出るまでは最も高級だった。(参考;http://www.h4.dion.ne.jp/~smatic/treasure/lordmarvel.html、http://fukkun36.exblog.jp/7081512/、など)

風防はプラスチック、ケースはS/S、OHすれば磨き上げが可能なので綺麗になるはずだ。初期の黒皮のバンドが付いていたがぼろぼろなので交換しなくてはいけない。とりあえず以前ロンジンでお世話になった河原町松原のウォッチドクター瀧田(http://www.watch-dr.com/)にメールしてみた。OH終わったらバンド交換もして…、バンドはレザーで、プッシュ式中留めになっているやつにしたいなぁ。

MARANTZ – NETWORK AUDIO PLAYER – NA7004

最近オーディオに関して情報収集を怠っていたが、面白そうな製品がリリースされていたので、追記しておく。
http://www.phileweb.com/news/d-av/201007/26/26461.html
http://www.youtube.com/watch?v=FP4o7I-uFjs

この分野においては、英国LINNが先鞭を付けていたが、価格が超高価であった。その後、PC周辺機器メーカーからHDMIを搭載したDLNA準拠のビジュアルプレイヤーが低価格でリリースされていたが、ピュアオーディオ的なプロファイルを持つ製品はLINNのみだった。もちろん散発的な国内メーカーからの単品オーディオのリリースはあったが、HD内臓タイプがほとんどであり、ミニコンポを除いて絶版となっている。

製品自体の発表は2010年5月。アメリカでの販売は2010年7月下旬に開始した。

自分にとっても気になる製品。またピュアオーディオ市場がどのようなレスポンスを示すのかも気になるところ。

(参考)
http://www.dba-pr.com/PDFs/Marantz%20Releases/2010%20Event/NA7004.pdf
http://hotworks.wordpress.com/2010/05/07/marantz-na7004/

「嗜好の多彩化」と従来の「記号的文化消費」についてのメモ

「電子書籍の衝撃:  本はいかに崩壊し、いかに復活するか?」に、予想外に面白いことが書かれていた。

嗜好の多彩化と従来の「記号的文化消費」の終焉が指摘言及されている。音楽分野を皮切りに出版業界もそれと同様の経過をたどるだろうと指摘されている。音楽に比べれば従来の「記号的文化消費」という特色は薄いのだが、文学でもなく、ルポでもない、ライトノベル(キャラクター小説)でもない共感文化ともいうべき新分野が台頭して来るのではないかという大胆な予測が示された。

社会の変容、流行の受け手側~ファッション・服飾
現在、服飾業界など、流行のサイクルの短期間化がおきているように思うし、そのムーブメントの影響力は弱くなっていると思う。戦後の経済成長と国民総中流と言われた社会状況下にあって、日本ではいくつもの大規模な流行(ファッションを中心とした大流行)を経験してきたため、企業のマーケティングも生産計画もその過去の成功パターンから抜け出せないまま緩やかな「退化」(退化という言葉で語られることが多いが、それが本当に退化なのかそれともシフトなのかは要解析と考えている)にある。実際、経済成長と国民総中流という社会状況はファッションの大流行と親和性が高い。`00年代、当時の韓国内ではファッションの大流行が大きな力を持っていたのではないかと筆者は考えているが、韓国の経済的躍進と単一民族に近い国家構成がその土壌にあったのではないかと考えている。現在の日本は経済成長が終わったため、従来の「記号的文化消費」はその役割を果たさなくなった。周りの人々よりも一歩先に豊かになっていることを誇示する必要が無いためである。そこで生じてくるのは誇示のための消費の無意味化、ムーブメントに対する関心の低下が起こる。

このことを考えるときに「Elastic!」の服飾をめぐる4つの文化圏に関する議論はとっても有用だ。
http://taf5686.269g.net/article/1934003.html

単に「記号的文化消費」の面しかメリットとして受け取っていなかった人は、この記事中に紹介されている「服装文化圏 <特徴> 所詮は服、人に不快感を与えなければOK  (ファッションを「服」として捉えているのが特徴。値段とクオリティのバランスを重要視し機能性にもこだわる。ファッションへの関心の度合いは総じて低いけど、身だしなみをきちんと整える人もいれば無頓着な人もおり多種多様)」のようになるのではないか?

「記号的文化消費」ではない何かを「服」に対して感じていた人々はそれぞれの文化土壌を反映して、モード文化圏やオシャレ文化圏や服飾文化圏へと再編成されてゆく。それまでは「いけてる」から「いけてない」までの一次元だった評価ベクトルが複雑化し、バルクからそれぞれの文化へと緩やかに繋がっていくイメージ(もちろん複数の文化圏にまたがる服飾というのもあります)へとかわる。

以上のようなことが現在の文化で起こっていると解釈している(乱暴な議論ではあるが…)。

社会の変容、情報の発信はどう変わるか~書籍

もともと書籍は音楽やファッションほどは「記号的文化消費」との親和性は高くない。新書やビジネス書やハウツー本に関しては、経済・工学に時事ネタや技術トレンドの変遷があるから、それが一定の求心力やトレンドフローを生み出すプロモーターとなる。その反面、漫画は(現状)初出媒体が雑誌であるために、雑誌が求心力として機能すると考えられるものの、ニューアイディアが湧出してくるポイントが経済・工学と違い予測不可能であるため、特定の雑誌が今までほどのトレンドフローを生み出すプロモーターとなることは考えにくい。さらに小説や評論は初出媒体が雑誌ですらないために今後あっという間に、脱中心化、「マイワールド」化が進んでしまうのではないだろうか。

・・・・
では香料世界における、「嗜好の多彩化」や「従来の「記号的文化消費」とまでは言わないが、それに近い状況だった流行現象を伴う大量生産という従来のモデルに対して、そのシフトはどれほどの影響があるのだろうか?まったくかわらないのか、それとも嗜好が多彩化してゆくのか?かなり気になるところである。

余談
「Elastic!」の記事を見ていたら、アウトレットモールに関する記事が出ていて、そのリファレンスに日系トレンディの記事と矢野経済のウェブパブリッシングがリンクされていた。日系トレンディの記事はともかくとして矢野経済のリファレンスが公開から1週間程度のタイムラグだった。すごい。この人は勉強家だなぁ、と思うと同時に「これ自分もやれるようになりたい」と思ってしまった。まずは情報収集と勉強からだなぁ。

「電子書籍の衝撃:  本はいかに崩壊し、いかに復活するか?」 佐々木俊尚

「電子書籍の衝撃:  本はいかに崩壊し、いかに復活するか?」 佐々木俊尚 

「『2011年新聞・テレビ消滅』!?では、本はどうなる!?キンドルに続き、アップルiPad登場。それは、本の世界の何を変えるのか?電子書籍先進国アメリカの現況から、日本の現在の出版流通の課題まで、気鋭のジャーナリストが今を斬り、未来を描く。」

最近気になりつつあった書籍・書類の電子化。それに関する情報収集のために買った本だったが、予想外に面白いことが書かれていた。ページを改めて詳述する。

http://www.amazon.co.jp/%E9%9B%BB%E5%AD%90%E6%9B%B8%E7%B1%8D%E3%81%AE%E8%A1%9D%E6%92%83-%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%BC%E6%90%BA%E6%9B%B8-%E4%BD%90%E3%80%85%E6%9C%A8-%E4%BF%8A%E5%B0%9A/dp/4887598084
より
出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010/4/15)
言語 日本語
ISBN-10: 4887598084
ISBN-13: 978-4887598089
発売日: 2010/4/15

電子化開始 ES-8000で


電子化をするといっていた件だが、仕事を開始した。なかなか快調である。

ES-8000は当初接続さえ出来なかった。古い機械なので接続がSCSI系なのだ。オプションでSCSIからネットワークに繋がるアダプターや、パソコン側に接続するボード(詳細未調査だがおそらくPCI)も在ったようだが、win98との接続について取説に書かれているところが泣かせる。もはや骨董のスキャナーだと言うことが分かった。

しかし道具としては優れていることも確か。透過光ユニットを取り付けて大量のネガを一気にスキャンしたり、ADFユニットを取り付けたりと使い方は多彩で、読み取り精度もmax800dpiという高性能。プロの道具である。がっちりと組み上げられた躯体はプロの道具と言う感じである。上蓋の開閉が怪しかったのは注油で一発で解決するし機械好きにはたまらない。

当初このES-8000はパラレルプリンタケーブルでの接続を考えていた。自分のデスクトップはプリンタポートがついており頭からこれで接続可能と考えていた。パソコン内にエプソンのサイトからマネージメントソフトを落としてきて、買って来たケーブルで接続。しかし接続してきて動作を確認すると無反応であった。ウェブで調査してみるとプリンタパラレルでの動作はwin98までの対応で、それ以降のPCではSCSIのみ動作対応とのことだった。スキャナーの世代交代を促進させるためだったのだろうと思う。

解決方法は二つほど考えられ、一つはSCSI~USB変換ケーブルで接続してしまう方法。もうひとつはSCSIケーブルとSCSI増設ボードを買う方法。結果的には変換ケーブルは見つからず、ジャンク屋で買ったSCSIボード(PCIバス)と古い規格のケーブルの専門店での買ったSCSIケーブルで接続に成功した。

SCSIボードは「AHA-2940AU」と言う製品でXP以降のPCでSCSI機器を使おうとすればこのボードは代表例となるのではないかという製品らしい。(参考)
http://www.adaptec.com/ja-JP/support/scsi/UltraSCSI/AHA-2940AU/
評価はなかなか見つからなかったが、こんなサイトもある(参考)
http://www.retropc.net/yasuma/V2/PC/SCSI/aha-2940au.html
なお、検索していくとこのボードとES-8000という組み合わせにチャレンジしている先例も何例か見つけることが出来た。お店のテロップでは「いわゆる鉄板品、保障なし、分かる人だけ買って下さい」とあった。このボードを見つけたのは末初ビル2Fである。

ちなみにこのボード、バスマスタDMA;バス上のカードがマスタ(DMAを制御するホスト)となって行うDMA転送方式、が可能らしい。昔の低速なコンピュータの時代の技術である。SCSIの転送速度はやはり恐ろしく遅いのだが、XPでもこの接続をしてやったほうが早いのだろうか?

ケーブルのほうは当時の製品が以下に多岐にわたって機器依存的なフォーマットを取っていたかを伺わせるものだった。単にSCSIといってもコネクタの形状はものすごく沢山在って、きちんとフォーマットを把握していないと、正確な接続が出来ないものなのだ。フルピッチなのかハーフピッチなのか、あるいはピンの数とか、変換アダプターを使える場合、使えない場合などいろいろ。きちんと動けばすごく使えるが、きちんと動かすのが大変なのが当時の機械だと思い知った。見つけてくれたのは東京ラジオデパート1Fのケーブル屋。真空管やトランスなども扱っている秋葉原らしいビルの一店。

さすが秋葉原。こんなに古いものがきちんと探せば手に入るとは…。ヤフオクなどでも地味にやれば見つかるのだろうが、懐の深さを感じる。

Alan Flusser「Clothes and the Man」

■2005年10月02日(日)21:05  の日記より

 紳士服の「今日風」はイタリアンクラシコである。去年くらいからブリティッシュトラディショナルという形も入って来てはいるが。…そんな時流を微塵も考慮せず、こんな本を読んでみた。アラン・フラッサーはアメリカ人紳士服デザイナー。雑誌「Gentry」05年5月号にこのデザイナーが紹介してあった。その誌中のダブルのスーツが印象に残っていたので調べてみたのだ。

 この本は1980年代に出された彼の2冊目の服飾論である。日本向けには水野ひな子が訳をしたものが、婦人画報社から「アラン・フラッサーの正統服飾論」という邦題で昭和63年に出版されている。既に絶版であるが福岡市図書館にあったので借りて読んでみた。

 アランフラッサーは雑誌中でも、この本の中でも1930年代のファッションを重視している。ロンドンのサヴィルロウそして第一次大戦後の好景気なアメリカが、現在まで続く紳士服のエレガンスの基礎を形成したとしている。スーツのディティールは3種類、寸胴なアメリカ型、絞りの利いたヨーロッパ型、その中庸のヨーロピアンアメリカ型に分類してある。現在流行のイタリアンクラシコもブリティッシュトラディショナルもヨーロッパ型である。団塊の世代に人気のヴァンジャケットやアイビースタイルは寸胴なアメリカ型である。

 またアランフラッサーはこの本の中で、首の長さや恰幅の差、顔の形、体の筋肉のつき方によって差はあるが、「最もエレガントなスタイル」は流行に左右されるものではないという。ラペルの広さ、ズボンの太さ、等には流行を除外した所に「自然さ」があり、皺の出方、袖の長さ、シャツの着方には流行によらない「絶対的基準」がある。どのシルエットが好きか、ダブルが好きか、シングルが好きか…シャツは何が一番に合うかさえ解っていれば、ワードロープはとてもシンプルになる、という。

 現在アメリカントラディショナルは下火なので、この本を読む人は少ないかもしれない。でも「ちゃんとしたスーツ」を考えるには、ケバ過ぎることなく貧相でもないエレガントで礼儀正しく見せてくれるスタイルを手に入れるためには、この本を読むのも良いかもしれない。筆者的には「今これが流行です」としか言わない販売店の店員にこそ、読ませてやりたい。

http://www.amazon.co.jp/Clothes-Man-Principles-Fine-Dress/dp/0394546237/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=english-books&qid=1281321936&sr=8-1
より(原著についてはデータがあった)
出版社: Villard (1985/10/12)
言語 英語, 英語, 英語
ISBN-10: 0394546237
ISBN-13: 978-0394546230
発売日: 1985/10/12

はじめての場所に降り立ったならば、音と香りを感じてみよう

■2008年10月26日(日)  の日記より

 完全に調律された生活を送りたい。完全に調和した精神状態でありたい。そのためには良い香りに包まれていなくてはいけないと思うし、良い音を配していたいと感じる。「非言語コミュニケーション」という言葉があるが、この音(喋り声ではない)・香りはそんな非言語コミュニケーションの最たるものだと思う。そしてこの音・香りは土地に滲み出している。

 たとえば高速道路や鉄道の効果の下は人に聞き取れないくらいの低周波の音が出続けている。長時間、高架の下にいると精神的におかしくなるという。また寝室にて安眠できる騒音レベルは20~30dB以下だそうで、これは通常のパソコンの起動時のファンの音や冷蔵庫のコンプレッサーの音のレベルだそうだ。そんなの気になったことなんて無いよ、と言う人も多くあるだろうが、これらのある部屋で寝なくてはいけないなら、その生活環境はベストとはいえない。たとえば禅寺体験旅行のような静かな環境の下でしばし暮らす体験をした後、もとの騒音環境に戻ったら、こんなにも苛酷な生活環境で暮らしていたのだ、と唖然とするかもしれない。逆にいい音というのは、倍音成分がきちんと入っていたり、和音構成(和音というのは周波数のずれによって生成してくる唸り)が良い、不協和音がきちんと除去されているものと言えると思う(これはオーディオ、PA、作曲、自宅録音などをしていくうえで重要になる)。携帯電話の着信音が単純な音から和音構成になったときの印象はすごかった。携帯電話をFomaにしたときに「黒電話」と言う名前の着信音があって、好んで使っていた。黒電話の鈴の音を周波数解析して、倍音成分や和音、その経時変化を再現したのだろう。

 香り。香りにもいろいろある。花・フルーツの匂い、茶・コーヒーの匂い、香水の匂い、お酒の匂い…、トイレの臭い、食べ物の痛んだ臭い、体臭、排気ガスの臭い…。香りには良い匂いと悪い臭いがあるようだ。ただ、良い香りだけでよいのかと言うとそうではない。香水には花の香りやフルーツのような良い匂いだけではなく、物の腐ったような臭いや体臭・排泄物の臭いや温泉の硫黄のような臭いが少しだけ入っていて、それが香水に深みを与えるのだ。また、食べ物でも、青みの魚も鮮度が少しでも落ちると臭う。伝統的な料理技術に従えば、焼き魚にしておろし醤油に柑橘類の香りを加えたり、たたきにして刺身にするなら茗荷や生姜やにんにくなどを加えポン酢で食べたりする。いい匂いと悪い臭いという括りはあまり意味を成さず、それらを絶妙にブレンドした香りが生活のふくよかさや深みを与えると表現すべきだろう。そしてその「ブレンド」は個人個人の生活史から成立してくるものだし、その個人個人の「ブレンド」が積み重なって家族や地方や国の香りの文化へと繋がっていく。香りは消してしまえばよいと言うものではなく、良い匂いで塗りつぶすべきものでもない。

 それでも悪い香りはある。昔住んでいた場所のひとつに果実の集積場があって、いつも腐った果物の臭いがしていた。清涼飲料水の集配場にも、そんな臭いがすることがある。使用済みの空き缶が集積されるからだろう。昭和くらいまでの日本建築でトイレ・台所・風呂の間取りが画一的だった(多くの場合、水回りは不浄として北側にまとめられた)のも、中国での風水という思想も、臭いと衛生の問題を解決するためという。現代の住宅では換気扇を用いることで方角と風通しの問題を解決している。臭いがどうなのかと言うよりは、衛生的なのかどうかが重要なのである。また排気ガスの浄化装置がよくなったとは言え、国道のそばはやはり排気ガスくさい。利便性を追求するのは仕方ないが人工的な臭いもなるべく避けたい。天然の建材がもてはやされ、無垢無塗装のフローリングに憧れるのは、人工的な臭いではなく天然の香りを人が求めているからかもしれない。

 はじめての場所に降り立ったならば、音と香りを感じてみたい。自分の求めるものがそこにあるのか分かるかもしれない。