匂い嗅ぎGC、AEDA、aromatch

匂いの分析をする上で、GC1,aは最も幅広く用いられている手法だ。だが混合物組成が分かるだけであるので、なぜその匂いになるのか、が分かるわけではない。とりあえず「何が入っていたのか」というデータは有用だし、蓄積してゆくべき知見。もちろん、低沸点分子の生成経路を調査したり、未知化合物を発見し構造決定することは生物学的に有用だし、そのような蓄積は医学・生物学には必要…

地道ではあるが、その二つを結びつけるような研究もなされている。香気分析というものは「何が入っていた」という分析から「どんなものが強く働いているのか」という分析、さらには「どんなものが強く働いていて、その寄与はこんな傾向なのだ」という分析に移行してゆくべきであろう。

そもそも香気物質はそれぞれ異なる閾値を持っている。そのため、大量に含まれる香気物質が香気のイメージに重要かというと、そうでない場合も多い。そのような微量で香気に大きな影響を及ぼす香気物質を、キー成分などと強調して呼ぶ。特異な分子構造を持っていることも多いb

香気イメージへの寄与の検討方法についてキーワードの説明をしてみる。

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「匂い嗅ぎGC(Sniff-GC)は、キャピラリカラムの出口を分岐し、一方を検出器に、他方を匂い嗅ぎポートに接続し、検出器によるクロマトグラムの取り込みと各ピークの匂い嗅ぎ(人間が嗅ぐ)を同時に行い、各成分の匂いの質を明らかにする」2ための装置である。匂い嗅ぎGC(Sniff-GC)はガスクロマトグラフィー-オルファクトメトリー(GC-オルファクトメトリー、GC-O)という呼称が使われることもある。検出器によるクロマトグラフィー結果が「クロマトグラム」と呼ばれるのに対して、匂い嗅ぎによるクロマトグラフィー結果を「アロマグラム」と呼ぶ(ただしこのカテゴリ、呼称は未統一)。

AEDA法とは、無臭空気で段階的に希釈し官能ガスクロマトグラフィーを行い、最も希釈されたサンプルでもニオイとして検知された成分を探す方法である(「香りのメカニズムとその測定・分析、評価技術」技術情報協会,p.96-97, (1999))。匂いの強度(寄与率)を数値化することが出来る2,3

OASIS、AROMATCH4,5,cは曽田香料が特許等で主張してきた手法である。GC-Oの出口から出てくる香気と原材料の香気を気相中で混合して評価する。GCは香気成分がそれぞれ特定の時間で分離され出てくるので、それを分離され出てくる時間時間で調合品の香気のイメージがどのように変化しているかを官能評価すれば、その調合品における単品香料素材の役割が分かるようになる。

1.香気成分分析 – JPO
2.GERSTEL 社匂い嗅ぎ装置の紹介 及びアプリケーション
3.小川香料|研究開発|研究レポート|茶飲料フレーバーに関する研究|関連論文No.1
4.Instructions for use Title 新規評価方法…
5.フレーバー分析と能

a.aromaphilia: ガスクロ(GC)に関する基礎知識的なメモ
b.aromaphilia: 硫黄の匂い、「サルファーケミカルズのフロンティア(CMC 2007年3月)」
c.aromaphilia: メモ;TEAC (11/19-21)

香りの生成について調べたい

藤森先生1-3,a,bという東京農大の先生が香気研究をされている。

この先生の経歴は、東京教育大学(現在、筑波大学)大学院理学研究科修士課程修了、農学博士(北海道大学)、その後、日本たばこ産業株式会社(JT)にてタバコの微量(香気)成分に関する研究をされている。いくつか論文を発表されている。研究はタバコ中に存在する特殊香気成分cの分離、化学構造の決定である。その後香料会社にて、忌避剤(=虫除け効果のある物質)などの研究をされていたようである。これに関しては特許をいくつかとられている。香料会社では分析のスペシャリストとして後輩たちの指導もかなりなさったようである。香料会社を退職した後は、非常勤講師を経た後、東京農大の教授としてやはり香気分析を中心に研究活動をされている。

経歴から解る様に、植物~農学~GC分析dのスペシャリストである。自分などは殆どGCメインに触った時期は無いので、ぜひ色々教えてもらいたいくらいだ。専門的な話になるが、香気成分としてどのようなものが含まれているか知る際(定性分析)、役立つのがGC-MSDであり、古典的にはマスパターンの解読が必須である。香料外社内の業務的にはマスパターンは既知化合物のライブラリーとコンピューター上で照合で解析するのでパターン解読は必須ではないのだが、未解明の香気成分を特定しようとすると、まず避けて通れない(そのような仕事は香料会社というよりは、学術あるいは熱心な大手の仕事なのだ)。

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かねてより、個人的に要調査事項が自分にはあった。香気成分の生成経路解明である。植物によって様々な酵素の作用によって原料物質が代謝され香気成分(主に配糖体のような前駆物質)が植物内に蓄積される。条件(気象、外敵などの要因、生殖‥)が整うと蓄積された前駆体に酵素が作用し、香気が発せられるのである。そのような経路の研究は結構為されているのだが、成書としては少ないし、特に「香気」の生成経路に関して注目し、纏めたものにはお目にかかったことが無い。

なぜこの研究に関して調査する必要があるのかというと、香気物質の発生経路、特に微量ストロング香気成分の生成経路についても知識を蓄積しておきたいから、ということが一番の理由として挙げられる。

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藤森先生に紹介してもらった本は「香り〈それはどのようにして生成されるのか〉」4,fである。出版社ホームページにて確認をすると、自分の探していた、学術情報の領域に合致していそうである。
 
今までこのような調べモノにおいては医学系の代謝経路の解説本を主に参照していた。その本は「医薬品天然物化学」Paul M Dewick/著 海老塚豊/監訳(南江堂 2004年)5,6である。但し、この本はあくまでも生化学の「教科書」なので、
· 「不揮発性物質の代謝」が話の殆どを占める(興味が湧きにくい)
· メジャー成分の話は言及されるが、微量香気成分の代謝の話はあまり言及されない。
というのは、代謝経路というものを考えるとき、主に生体内の不揮発性物質をかなり経、そのような「不揮発性物質の代謝」が話の殆どを占めることになってしまう。そして、その話においてはどうしてもメジャー香気成分の話が中心になってしまい、微量成分の代謝の話はあまり言及されない。実は香気においては微量ストロング香気成分が香気の重要なインパクトとなっているeのだが。

自分としては香気成分の生成経路、代謝経路を明らかにしたい、微量ストロング香気成分の生成経路についても言及してあって欲しい、更にはそれらの初出文献まで知識をリンクするリファレンス群が欲しいと思っていた。出発点となるロードマップはこの「医薬品天然物化学」であるだろうし、「香り〈それはどのようにして生成されるのか〉」であろうと思う。もっとも、最終的には余力があった際に、自力で文献のリンクを構築するしかないのだろうが…。

「香り〈それはどのようにして生成されるのか〉」は香りの図書館か、早稲田大学の図書館にもあるみたい(?)なので、確認しようと思っている。

参考およびブログ内関連投稿
1.藤森嶺-香りの魅力を科学の言葉で-香りの科学入門--早稲田大学<エクステンションセンター早稲田校>-公開講座JAPAN
2.Amazon.co.jp: 香りの科学と美学: 藤森 嶺: 本
3.Welcome to Our Company : Home
4.|書籍|香り〈それはどのようにして生成されるのか〉|フレグランスジャーナル社
5.[ 南江堂 ]
6.医薬品天然物化学 : Paul M Dewick/著 海老塚豊/監訳 – セブンネットショッピング

a.aromaphilia: 香料・香気のデータベース化について
b.aromaphilia: 「香りの科学と美学」(藤森嶺)
c.aromaphilia: セスキテルペンの香料
d.aromaphilia: ガスクロ(GC)に関する基礎知識的なメモ
e.aromaphilia: 硫黄の匂い、「サルファーケミカルズのフロンティア(CMC 2007年3月)」
f.aromaphilia: 「香り〈それはどのようにして生成されるのか〉」蟹沢 恒好 (フレグランスジャーナル社2010年10月)

香料・香気のデータベース化について

僕にとって未知であり、未解明のものである「香り・匂い」とそれを作る「調香」。香り、匂いというものは一筋縄では分からないものだ。でもその香りの世界の仕組みについても、どうなっているのか知りたい。現在調香トレーニングを受けながら日々考え、そして調べた断片をどんどん繋げてゆきたい。やがてその知識の断片、着想、感じたこと等などは繋がり始め、クラスターとして自分の眼前に広がってくれるのではないかと考えている。

そして結晶化された知や考察はやがて繋がりはじめ、相補的でゆたかな「繋がっている智」に至るはずである、と自分は考えている。それがこのブログのアドレスとして盛り込んだ「idea cluster」の真意である。

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藤森先生の社会人講義に出てみた。藤森先生は理学系の思考をしていそうである。もちろん思考は指向であって、志向であって、嗜好だ。精神論などもお好きということだったが、自然科学研究の中に神性を見出すという方向性なのではないか?自然科学は理論で筋が通っているが、人間がその理論に至れるという保障もなく、正しい直感が自然科学の回答と一致するという保証も無い。

話は幾らかそれたが、藤森先生の最初の講義で最も印象に残ったのが、「香りを囲む表象」の図。その中で、「調香」や「香りの言葉での表現」という部分が、全く学際領域として未成立である。それが明確に解ったために藤森先生のその図をとても気に入った。しかも藤森先生自身も単品香料の官能評価において、単品のみで嗅いだ場合と、他の香気中で嗅いだ場合の官能評価に差があることを、科学的に追求しようとしているという話を聞いて、より一層この先生に関心を深めた。

全く学問的に成立していないこの分野に対して、学際的なアプローチを為して行こうと考えるときに、様々な学際領域に断片的に散らばっている研究成果を、まずはidea cluster的につなぎ合わせてゆくことが重要なのではないかと考える。おそらく単純な香料会社の処方研究のレベルでは、調香に対する学際的な研究は不可能だと思うのだ。しかし香りの文化を包括的に理解するためには、調香という人為的な創造行為に対する解釈がいずれ必要になると思う。

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学際的な研究としても、実業的な研究としても香りの組成データ集め、これが重要になるのではないだろうか。大規模に蓄積された香気データは実業的にも大変有意義な解釈を与えると思う。単純に思いつく仕事が、調香向けトレンド解析や、新規化合物の使いこなしに関するアコード分解、などなど。

メンバーは分析と化学系のスペシャリスト、そして官能評価パネラーが居たら良いなぁとおもう。

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(関連記事)
aromaphilia: 私について、このブログで書こうとしているコトについて
aromaphilia: 「香りの科学と美学」(藤森嶺)

(藤森先生関係)
藤森嶺-香りの魅力を科学の言葉で-香りの科学入門--早稲田大学<エクステンションセンター早稲田校>-公開講座JAPAN
Amazon.co.jp: 香りの科学と美学: 藤森 嶺: 本
Welcome to Our Company : Home(東京農大 生物産業学部 食品香粧学科 医食香粧分野 食品香粧機能学研究室の教授です)

ガスクロ(GC)に関する基礎知識的なメモ

ガスクロマトグラフィー (Gas Chromatography, GC) はクロマトグラフィーの一種であり、気化しやすい化合物の同定・定量に用いられる機器分析の手法である1)。クロマトグラフィー (Chromatography) とは(物質の大きさ・吸着力・電荷・質量・疎水性などの違いを利用して)物質を分離・精製する技法2)。クロマトグラフィーを適用した結果は各成分ピークの移動速度として現れるが、ガスクロマトグラフィーにおいてはカラム末端から時系列に現れる様をチャートに表したものをクロマトグラム (Chromatogram) と呼ぶ。すなわち、時間軸に対する検出器応答をプロットしたものでのピークの出現時間を保持時間と呼んであらわす2)

保持時間 (Retention Time) とは、サンプル注入時点から、分離された成分がピークを示す時点までの時間をいう。保持時間は分析条件が等しいかぎり物質によって固有の値である。ピーク面積 (Peak Area) とは、各成分ピークとベースラインとの間の面積のことである。たいていの検出器では、ピーク面積は成分量にほぼ比例する2)

検出器1)

検出器はカラム出口に設置され、サンプルの各成分を検知して電気信号に変換する部位である。GCでは汎用目的にはTCDもしくはFIDが用いられる。

FID(Flame Ionization Detector, 水素炎イオン化型検出器)
物質を水素炎中で燃焼することによって発生するプラズマ電子を検知するものである。C−H結合(ただしカルボニル炭素と直接結合した水素は除く)を持つ化合物に対して感度を有するため、一般の有機物に対する感度は高いが、水や二酸化炭素などの小分子ガスは感知できないのが欠点である。基本的には破壊的な検出方法であるため、サンプルの分取が不可能。

TCD(Thermal Conductivity Detector, 熱伝導度型検出器)
物質の熱伝導度の違いを利用してサンプルの検出を行う。キャリアガス以外のほぼあらゆる物質を検知できるが、感度があまり高くないので希薄サンプルには不向きである。基本的には非破壊的な検出方法であるため、サンプルの分取が可能。匂い嗅ぎGC(GCスニッフィング)の検出はこの方法だと思う(未確認)

MSD3)
 質量分析においては、試料はイオン化され、電界または磁界中で分離される。また、試料分子をイオン化する過程は要するに分子からの電子移動であるため、後続反応によって試料が分解することがある。この過程をフラグメンテーションという。フラグメントイオンの生成パターンは分子の構造によって(おおまかにではあるが)決まっており、分類・理論化が行われている。

マススペクトル (Mass Spectrum, MS) は、質量分析の結果得られる、横軸に質量(正しくはm/z 値)、縦軸に検出強度をとったスペクトルである。試料分子の構造に関係する情報が多く含まれるため、既知物質の同定や新規物質の構造決定に用いられる。

GCは工業的な分析ではアジレントが強いようだ4)。お勉強していてあやふやなところが多いので色々切り貼りしてメモを作った。

1.ガスクロマトグラフィー – Wikipedia
 (内部構造の絵)
2.クロマトグラフィー – Wikipedia
3.マススペクトル – Wikipedia
4.アジレントのガスクロマトグラフとGC/MSシステム | アジレント・テクノロジー株式会社

(memo) sulfox

(memo)
せっかく調べたので。転記。

sulfox; (Iupac name )p-Mentha-8-thiol-3-one,  8-メルカプト-p-メンタン-3-オン;
CAS Number: 38462-22-5

参考
サルファーケミカルズのフロンティア p.246 (isbn9784882316670)
21) R. Kaiser. D. Lamparsky and P.Schundel, J. Agric. Food Chem, 23, 943-950(1975)
66) A. Mosandl, Flavors,Regulation,Control, Brusels, p.16 -17 (1990)
67) T.Koepke. A.Mosandl, Z. Lebensm Unters Forlers., 194, 372-376(1992)

p-Mentha-8-thiol-3-one, tech.

メモ 「香りの技術動向と研究開発 」中島基貴 フレグランスジャーナル社 (2004/06)

「(アロマサイエンスシリーズ21 全9冊(8)香りの技術動向と研究開発 」
フレグランスジャーナル社 (2004/06)

中島基貴 編 
B5判 306頁 
定価 5,670円(本体 5,400円)
2004年6月 第1刷
ISBN 978-4-89479-080-3

アロマサイエンスシリーズ

■内容

香りの合成研究は、技術革新により飛躍的発展を遂げています。本書では、代表的な合成技術の最近の動向、分析・抽出技術を詳述し、併せて香木・線香の研究内容も紹介します。

■目次

1 ムスク系香料の技術動向と研究開発
2 グリーン系およびジャスミン系香料の技術動向と研究開発
3 ウッディ系香料とアンバー系香料の技術動向と研究開発
4 ラクトン系香料の技術動向と研究開発
5 光学活性体香料の技術動向と研究開発
6 ヘッドスペース技術と香料開発
7 超臨界抽出技術と香料開発
8 香木の化学―香木の香り成分の研究
9 線香の香りの研究

|書籍|(アロマサイエンスシリーズ21(8))香りの技術動向と研究開発|フレグランスジャーナル社
Amazon.co.jp: 香りの技術動向と研究開発 アロマサイエンスシリーズ21 (8): 中島 基貴: 本

「新しい農薬原体・キー中間体の創製2011」CMC2011

最近出たらしい本。目次を見てみただけだが、結構読んでみたいなぁとおもう本。

香料は香料原料と調香という二面がある(もちろん調香ベースという原料と製品の中間的なものもあるが簡便のために「二面」として話す)。大規模な会社ほど両部門を持つ。

香料原料として20世紀に発達したのが有機合成を活用した合成香料である。有機合成に支えられた産業はいくつもあるが、一般的な化学工業と比較して香料の化学は商品単価が高く、しかし大量に原料供給しなくても良いという面が特殊な点である(また高い製品純度が必ずしも重要ではないという面も特殊か…)。その結果、合成部門を持つ香料会社は、少量、多品種、(やや)高単価の化成品を合成する技術を持つ会社も多い。

香料会社の合成部門が医薬中間体などの非香料製品を手がけることも多くなってきているようだ。医薬品などの中間体も少量、多品種、高単価であり、香料会社の持つ精密有機合成が有用な場合も多いのだ。精密有機合成の技術をメインとするこのような分野には、香料、医薬品、農薬などがあり、今市場にどのような化学品が必要とされているか、その化学品を合成する合成ルートとしてどのようなルートが現実的か、手持ちの原料に(少々のモディファイを加えた上で)流用出来るものが無いかリサーチする事が必要となる。

この本で纏められているそのような研究において有効(というよりはリサーチの出発点)ではないかと思う。

書籍:新しい農薬原体・キー中間体の創製2011

香気開発と新興市場 (シムライズのインドの香料学校)

雑誌perfumer & flavorist; 2010, vol.35, no.12, p.26に“マーケット開発そしてアジア大西洋圏の市場に訪れるさらなる発展にそなえるべく、シムライズが「明日の香料」のために新しい人材拠点を設立した”という見出しの記事があった。

インドは新興市場としてかなり有望視されている。日系化粧品メーカーも日本製ブランドの売り込み、などの記事で日経新聞に取り上げられたりしている期待の市場である。新市場が成熟してくるに従って、新しい香調も求められるようになってくる。パワーシフトの象徴は外からやってくる香気ではなく、自らにマッチするよう誂えられた新香気だ。市場の一層の成熟が見込まれる場合には、新市場の近くに新しい「香気開発ユニット」を設置して、現地の人々、現地の感覚を大いに取り入れた香気開発を行う。まさにそんな新拠点の設置がこのニュースだ。

他社がどの様に新市場にアプローチを掛けているのか?この断片的な記事だけでなく、もっと色々調べて知りたいなぁ、と思った。

First Look: Inside the New Symrise Perfumery School in India | PerfumerFlavorist.com

かるかんと薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)

○かるかん
かるかん、とは古くは鹿児島、現在では九州を代表する菓子のひとつである。ネットをみているとある程度の知名度はあるが、本州(四国・北海道含む)ではまだまだ販売数は少なそうである。古典的なものは羊羹、もしくはカステラの形状をしていて、「生地」のみだが、現在それ以上に流通していると思われるのが餡を入れた饅頭状のものである。1, 2, 3)

鹿児島の老舗菓子店のウェブページ2)には以下のように説明してある。
「原材料に自然薯(山芋)をふんだんに使った羊羹(棒羊羹)のかたちをした和菓子。空気をたっぷり含んで蒸されるため、ふんわり柔らかい。饅頭などの他の和菓子に比べても際立って白く、…口に運ぶとまろやかな甘さが広がる、小麦粉だけで作られた蒸し菓子とは違った自然薯(天然の山芋)のもつ香ばしさが飽きさせない。…真っ白な姿からは想像つかないほどのしっかりと主張とコクのある味。…「軽羹」の名前の由来は諸説ありますが、その中に「軽い羹」という意味からきたという説があります。…」

製法についてはウィキペディア1)の方が解りやすく纏まっている。
「原料としては、かるかん粉、砂糖、山芋を用いる。かるかん粉は米の粉である…。山芋については、やまと芋(ナガイモ)などよりも自然薯(ヤマノイモ)が適しているとされる。これらの原料に水を加えて蒸し、弾力性の有る白色の半スポンジ様に仕上げたのが軽羹である。…」

○ヤム芋(ヤマノイモ)
なお、よく間違いやすい「山芋」。これには全く植物として異なる2種が混同されがちである。さらにそれぞれ地方によって呼称が異なるので長文になるが整理する。4, 5, 6, 7)

ヤマノイモ(山の芋、学名:Dioscorea japonica)…は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属のつる性多年草。本州から四国・九州および、朝鮮半島、中国に分布する雌雄異株のつる植物で、元来は野生の植物であり、現在ではむかごの状態から畑で栽培されており、流通しているのは栽培ものが多い。一名ジネンジョウ、ヤマイモ、エグイモ、ジネンジョ、サンヤク、ヤマツイモ等地方により異名あり。

赤土土壌で採れたものが、風味がよいとされる。

基本的に、ナガイモと同じような食べ方をするが、風味にはやはり違いがある。ナガイモと比較すると遥かに粘り気が強く、普通にすりおろしただけだと餅や団子のようになり食べづらいため、出汁などを加えてのばす方法が一般的である。かるかん、きんとんなど、和菓子の材料にもなる。

○ヤム芋(長芋)
ナガイモ(長芋)は、ヤマノイモ科ヤマノイモ属の Dioscorea batatas。シノニムとして D. polystachya、D. opposita などがある。利用法によっては漢名の山薬(さんやく)、薯蕷(しょよ)、英語名のチャイニーズヤム (Chinese yam) でも呼ばれるが、ヤマノイモ属の食用種の総称ヤム(yam)をヤマノイモ、ヤマイモと訳すことがある。しばしばナガイモ(長芋)はヤマノイモ、ヤマイモと呼ばれるために混同する(ヤマトイモという呼び名もあるが地域によって意味が異なり、ツクネイモまたはイチョウイモをさす)。

中国原産で、日本へは17世紀以前に渡来した。最も高緯度で栽培されるヤムイモのひとつである。雌雄異株のつる植物で、夏に花を付ける。ナガイモはヤマノイモ(自然薯)と異なり日本原産の野菜ではなく、また山野に野生化することも無い。また、染色体の数も異なる。

芋の形状その他により数種類の品種群に分類されている。ただし、品種として完全に分かれているわけではなく、たとえばナガイモからツクネイモが収れたりすることもある。

・ナガイモ群…円柱状の芋を持つ。芋の粘りは少なく、きめも粗いが、生産は比較的容易。主な産地は青森県上北地方、北海道帯広市、幕別町、長野県中信・北信地方など。近年では、ヒゲ根や毛穴がほとんどなく、皮ごと調理可能なナガイモが品種登録されている。
・ツクネイモ群…芋は丸みを帯びる。粘り、きめの細かさがナガイモやイチョウイモよりも強く、ヤマノイモ(自然薯)と並び、最も美味とされる。主な産地は兵庫県丹波市・篠山市(黒皮種の丹波ヤマノイモ)、奈良県・三重県(白皮種の大和イモ、伊勢イモ)。
・イチョウイモ群…芋は扁形で、下は広がる(イチョウ形)。ナガイモよりは粘りが強い。主な産地は群馬県太田市尾島地区(大和イモ)。

ヤマノイモ同様、長く伸びる芋を食用にし、すりおろしてとろろにする調理法が代表的。これは、澱粉質を分解する消化酵素であるジアスターゼ(アミラーゼ)を多く含んでいるので、加熱に弱く、生食が適することによる。ただし、すりおろしたナガイモは焼き上がりをよくするためにお好み焼きなどの生地に混ぜられることもあり、粉末状にした専用の長芋粉も販売されている。

○薯蕷(じょうよ)饅頭
さて、このような背景を持つ「軽羹」。ただし、ヤム芋系の芋と、穀類の粉と上白糖の組み合わせから出来る蒸し菓子として忘れてはならないのが、薯蕷(じょうよ)饅頭である。なお薯蕷(じょうよ)は「上用(じょうよ)」という当て字を使って読むことがあり、最近では、こちらの方が一般的。例えば虎屋は薯蕷饅頭についてウェブ上で以下のように紹介している。10)
「薯蕷饅頭は皮につくね芋を使ったお饅頭です。その歴史は古く、江戸時代に京都で生まれたといわれています。つくね芋特有のきめの細かさ、しっとりとした上品な味わいが特徴です。」

上用万頭を食べるとその老舗のレベルがわかるといわれるほど、シンプルなのに、基本を問われるお菓子である。薯蕷(じょうよ)万頭は、茶席においても主菓子として使われる。茶で珍重される理由は茶との相性が特によいからである。茶の香気を損ねない饅頭を作るためためには、匂いの強い動物性のつなぎを使いにくく、植物性のつなぎとしてこのヤム芋系のつなぎが発達したのではないか。8)

もっとも蒸し菓子に適したヤム芋は調べた範囲では日本土着の自然薯だと考えられる。1)ただし、野生種で栽培が難しい、栽培条件(おそらく気温、詳細未調査)が限られるため、同様の蒸し菓子を作るためにはもっともつなぎ効果の高い長芋系であるつくね芋を使った菓子も多いのだろうと考えられる。自然薯は最適産地(気温、火山灰地)である鹿児島では軽羹のつなぎとして用いられ、関西ではつくね芋(長芋)が薯蕷饅頭でつなぎとして用いられているのだろうと考えられる。それでも、どちらも文献に登場するのは江戸時代からであり、格式の高い菓子として位置づけられ、高度な製菓技術を要求される献上菓子の地位にあることは面白い。日本としてひとつの菓子文化として共通する考え方の筋が通っており、それぞれの土地でその菓子に対しする考え方を具現化したものが、それぞれ軽羹と薯蕷饅頭なのだろうと思った。

なおヤム芋は熱帯~温帯に生育し、特に熱帯では主食として用いられる。日本では、さつまいもやじゃがいもが無かった時代には、いもといえば、山芋をさしたようで、現在、日本で採れる山芋は、大きく分けると、長いも、大薯(だいしょ)、自然薯(じねんじょ)の3種類で、農林水産省の統計種類でも、この3種類を山芋と呼んでいる。7, 9)

日本の菓子文化も面白いものだなぁと思う。

1.軽羹 – Wikipedia
2.軽羹百話-軽羹とは
3.CiNii 論文 –  かるかんの起源について
4.ヤマノイモ – Wikipedia
5.ヤマノイモ Dioscorea japonica 薯蕷 野山藥(2900)* – ギンジョーの薬草ハーブ日和
6.ナガイモ – Wikipedia
7.おいしいねっと~山芋(やまいも)
8.(関連投稿)aromaphilia: 茶の香気を尊重する菓子、嗜好品の時間における香りの調和
9.(関連投稿)aromaphilia: 世界の食文化地図
10.とらやの和菓子 特別注文商品 -薯蕷饅頭-|株式会社 虎屋

屠蘇やら七草粥やらのメモ

新年にまつわる食べ物は多いが、お屠蘇とは何なのだろう。答えは漢方薬のようだ。独特のあの香りを嗅ぐと新年だなぁと思う。組成例はwikipediaからの引用だが、匂いも強いものばかりである。

「山椒・細辛・防風・肉桂・乾薑・白朮・桔梗」

なお、春の七種…春の七種とは以下の7種類の植物である。

○名前 現在の名前 科名
・芹(せり) セリ セリ科
・薺(なずな) ナズナ(ぺんぺん草) アブラナ科
・御形(ごぎょう) ハハコグサ(母子草) キク科
・繁縷(はこべら) ハコベ(蘩蔞) ナデシコ科
・仏の座(ほとけのざ) コオニタビラコ(小鬼田平子) キク科
・菘(すずな) カブ(蕪) アブラナ科
・蘿蔔(すずしろ) ダイコン(大根) アブラナ科

とりあえずメモを切り貼りした(詳しく書くかも)

屠蘇 – Wikipedia
屠蘇(とそ) 飲む・楽しむ 月桂冠
七草 – Wikipedia