バラの香り

バラの香りは香粧品業界では王様ような、別格の存在である。大昔からローズは高級の代名詞であって、高級な化粧品はローズの香りをつけたものが多い。ローズの(生花の)香気分析もコンスタントに続けられており、フレグランスジャーナルのような香粧品雑誌にも定期的な研究成果の報告がなされていたりする。

ローズの精油のとり方は、アブソリュート法と水蒸気蒸留法がある。アンフルラージュ法も存在するが、香気的にはアブソリュートに繋がるものであるので市場にはないと考えてよい。

見過ごされがちだが、花の香り、その製油の香りは植物の品種、生産地(テロワールのようなものと考えても良い)にかなり依存しており、生花店に流通しているローズは、市販のアロマオイルとは異なる匂いであるし、仮に大量に集めて精油抽出しても同じ香気のオイルは得られないだろう。生花店にて売られているバラは品種交配によって痛みにくく、望みの色の大振りの花を咲かせるように品種改良されている。鉢植えのものでも、四季咲き性(季節を問わず花が咲く性質)を持たせたりされている。
精油は原種に近い品種から得られる。そのために自分としては品種に関して、品種改良史に関して知りたいなと思っていた。以下のような本があったら詳しく調べることが可能ではないかと考えている

http://www.amazon.co.jp/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BA%E8%8A%B1%E5%9B%B3%E8%AD%9C-%E9%87%8E%E6%9D%91-%E5%92%8C%E5%AD%90/dp/4093055033/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1282010479&sr=8-1
より
オールド・ローズ花図譜 [大型本]
野村 和子 (著)
# 大型本: 337ページ
# 出版社: 小学館 (2004/03)
# ISBN-10: 4093055033
# ISBN-13: 978-4093055031
# 発売日: 2004/03
# 商品の寸法: 26.2 x 19.2 x 2.8 cm

バラの香りと系譜図

新潟県長岡市宮本東方町字中山1921-2 越後公園管理センターのサイトでは香りから栽培されているバラの分類を試みています。
http://echigo-park.jp/guide/flower/rose/fragrance/index.html
それによると「香りのばら園」の「香りのエリア」は次の6種類に分類されています。なおこのサイトでは系譜図などもあり、栽培品種のバラの香りを考えるためには有用と思われます。

* ブルーの香り
ブルーの花色を持つ青ばら系の品種のほとんどが、この香りをもっています。この香りは主としてダマスク-モダンの香り成分とティーの香り成分が混在し、他にはない独特な香りを形成しています。(ブルーの香りをもつ代表的なばら;ブルー ムーン、ブルー パーフューム、シャルル ドゥ ゴール、ブルー ライト)

* ダマスク-クラシックの香り
皆さんが知っている、いわゆるばらの香りといえばこの古典的な香りでしょう。強い甘さと華やかさやコクを合わせ持っていて、心を酔わせる香りです。現代ばらには典型品種が意外と少なく、ティーやフルーティーの香りがやや強く出る傾向があります。(ダマスククラシックの香りをもつ代表的なばら;芳純、香久山、グラナダ、香貴)

* ティーの香り
ダマスク系の香りとは全く異なる特有の香り成分を含有しています。香り立ちは中程度ですが、上品で優雅な印象を与えます。現代ばらの品種に最も多くある香りです。ハイブリットティーローズの多くには量の多少はあるものの、このタイプの香り成分を含有しています。(ティーの香りをもつ代表的なばら;ガーデン パーティー、ディオラマ、秋月、天津乙女)

* ダマスク-モダンの香り
ダマスク-クラシックの香りを受け継ぎながら、香り立ちは強くより情熱的で洗練された香りです。ダマスク-クラシックとは含有する成分のバランスが異なっているために香りの質も違って感じられます。比べてお楽しみ下さい。(ダマスク-モダンの香りをもつ代表的なばら;パパ メイアン、レディラック、シャルル マルラン、マーガレット メリル)

* フルーティーの香り
ダマスク系およびダマスク系の香りが変化した成分が多く含まれ、さらにティー系の特徴成分がいろいろなバランスで混在した香りを持つことが特徴です。ピーチのような香りや、アプリコット、アップルなどの新鮮な果実の香りが想起される香りです。(フルーティーの香りをもつ代表的なばら、ダブル ディライト、フリージア、マリア カラス、ドフト ゴールド)

* スパイシーの香り
ダマスク-クラシックの香りが基調ですが、丁字(クローブ)ようの香りがやや強く感じられスパイシーな香りが特徴です。(スパイシーの香りをもつ代表的なばら;粉粧楼、デンティーベス、ロサ ルゴサ、ロサ ルゴサ アルバ)

バラの系譜

ばらの原種が地球上に誕生して以来、この原種の自然交雑から200余種の野生ばらが誕生したと考えられています。約2000年前には早くもばらの栽培が始まっていました。

この栽培ばらでの交配が重ねられ、オールドローズが生まれました。オールドローズは一季咲き性ですが、花形だけでなく芳醇な香りを持つものも多くみられました。18世紀末に中国原産の四季咲き性のばらがイギリスに導入され、ヨーロッパ・アメリカさらに中近東にも広がり、ばらの園芸化に大きく貢献しました。

1867年に現在ある園芸品種ばら作出の基礎となったモダンローズ(現代ばら)が生み出され(1837年という説もあります)、その後ハイブリットティー ローズ、フロリバンダ ローズ、ミニアチュアローズ、クライミング(つる性)ローズ等の園芸品種が出現しました。モダンローズの中でも特に芳香性の強いハイブリット ティーローズなどの香りが6種類に分類されております。

参考書リスト
オールドローズと現代バラの系譜 (単行本)
バラの系譜編集委員会 (編集)
# 単行本: 216ページ
# 出版社: 誠文堂新光社 (2009/04)
# ISBN-10: 4416409052
# ISBN-13: 978-4416409053
# 発売日: 2009/04

wikiも結構詳しいです
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%A9

日本デオドール 石川氏、大嶋氏

J-waveに臭気判定士がゲスト出演して話をしていた。人をひきつける匂い、好きな匂いは何ですか?無臭空間が好まれていたが、最適な匂いが好まれるようになった、など面白そうな話を結構していた。臭気判定士・大嶋理恵子氏は日本デオドールのスタッフ。

日本デオドール・臭気判定士・石川英一氏のブログが公開されている(http://nioinojikenbo.blog.smatch.jp/)。会社HPはhttp://www.deodor.co.jp/

はじめての場所に降り立ったならば、音と香りを感じてみよう

■2008年10月26日(日)  の日記より

 完全に調律された生活を送りたい。完全に調和した精神状態でありたい。そのためには良い香りに包まれていなくてはいけないと思うし、良い音を配していたいと感じる。「非言語コミュニケーション」という言葉があるが、この音(喋り声ではない)・香りはそんな非言語コミュニケーションの最たるものだと思う。そしてこの音・香りは土地に滲み出している。

 たとえば高速道路や鉄道の効果の下は人に聞き取れないくらいの低周波の音が出続けている。長時間、高架の下にいると精神的におかしくなるという。また寝室にて安眠できる騒音レベルは20~30dB以下だそうで、これは通常のパソコンの起動時のファンの音や冷蔵庫のコンプレッサーの音のレベルだそうだ。そんなの気になったことなんて無いよ、と言う人も多くあるだろうが、これらのある部屋で寝なくてはいけないなら、その生活環境はベストとはいえない。たとえば禅寺体験旅行のような静かな環境の下でしばし暮らす体験をした後、もとの騒音環境に戻ったら、こんなにも苛酷な生活環境で暮らしていたのだ、と唖然とするかもしれない。逆にいい音というのは、倍音成分がきちんと入っていたり、和音構成(和音というのは周波数のずれによって生成してくる唸り)が良い、不協和音がきちんと除去されているものと言えると思う(これはオーディオ、PA、作曲、自宅録音などをしていくうえで重要になる)。携帯電話の着信音が単純な音から和音構成になったときの印象はすごかった。携帯電話をFomaにしたときに「黒電話」と言う名前の着信音があって、好んで使っていた。黒電話の鈴の音を周波数解析して、倍音成分や和音、その経時変化を再現したのだろう。

 香り。香りにもいろいろある。花・フルーツの匂い、茶・コーヒーの匂い、香水の匂い、お酒の匂い…、トイレの臭い、食べ物の痛んだ臭い、体臭、排気ガスの臭い…。香りには良い匂いと悪い臭いがあるようだ。ただ、良い香りだけでよいのかと言うとそうではない。香水には花の香りやフルーツのような良い匂いだけではなく、物の腐ったような臭いや体臭・排泄物の臭いや温泉の硫黄のような臭いが少しだけ入っていて、それが香水に深みを与えるのだ。また、食べ物でも、青みの魚も鮮度が少しでも落ちると臭う。伝統的な料理技術に従えば、焼き魚にしておろし醤油に柑橘類の香りを加えたり、たたきにして刺身にするなら茗荷や生姜やにんにくなどを加えポン酢で食べたりする。いい匂いと悪い臭いという括りはあまり意味を成さず、それらを絶妙にブレンドした香りが生活のふくよかさや深みを与えると表現すべきだろう。そしてその「ブレンド」は個人個人の生活史から成立してくるものだし、その個人個人の「ブレンド」が積み重なって家族や地方や国の香りの文化へと繋がっていく。香りは消してしまえばよいと言うものではなく、良い匂いで塗りつぶすべきものでもない。

 それでも悪い香りはある。昔住んでいた場所のひとつに果実の集積場があって、いつも腐った果物の臭いがしていた。清涼飲料水の集配場にも、そんな臭いがすることがある。使用済みの空き缶が集積されるからだろう。昭和くらいまでの日本建築でトイレ・台所・風呂の間取りが画一的だった(多くの場合、水回りは不浄として北側にまとめられた)のも、中国での風水という思想も、臭いと衛生の問題を解決するためという。現代の住宅では換気扇を用いることで方角と風通しの問題を解決している。臭いがどうなのかと言うよりは、衛生的なのかどうかが重要なのである。また排気ガスの浄化装置がよくなったとは言え、国道のそばはやはり排気ガスくさい。利便性を追求するのは仕方ないが人工的な臭いもなるべく避けたい。天然の建材がもてはやされ、無垢無塗装のフローリングに憧れるのは、人工的な臭いではなく天然の香りを人が求めているからかもしれない。

 はじめての場所に降り立ったならば、音と香りを感じてみたい。自分の求めるものがそこにあるのか分かるかもしれない。