「香り〈それはどのようにして生成されるのか〉」蟹沢 恒好 (フレグランスジャーナル社2010年10月)

「香り〈それはどのようにして生成されるのか〉」を読んでみた。まだ斜め読みした程度だが、情報を整理しておこうと思う。
香りの生成機構について、現在分かっている点について総論的に纏めてあって、分かりやすい本だと思う。ちなみに反応式で書かれている部分もあるが、代謝経路に関しては大まかにしか記述されていないし、特に植物の代謝に関して酵素の話に踏み込んだり、酵素発現に踏み込んだりした話はあまりなかった。ちょっと残念だったのが、参考文献に関する情報が弱い。何らかの本で見たことのある話が多い(C6、C9系のグリーンの香りなど)。
それでも、本としては纏まっていて、そこまで生化学に馴染みがなくても読み難いほどではない。
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紹介文は以下のとおり。
「植物や動物等の生物から香りがどのようにして生成するかについて、その解明は遅々として進んできませんでした。しかし近年に至り、化学工業の著しい進歩発展に伴ない香りの生成機序が解明されるようになり、香りの生成が化学的に立証されるようになってきました。
本書は、高砂香料工業で長年香料の研究に従事してきた著者が、渾身の技術力を発揮して書き下ろした新書です。本書の特徴は、1)香りの生成についての全体像が分かりやすく簡潔にまとめられている、2)香りの生成機構を中心に香りが生成する意義と役割について紹介する、3)生成反応ごとの種類を見てゆくと香りの理解が得られやすい、4)人類と香りの関わりを進化の過程を考察しながら、人類もまた香りを作り出す生物になったこと、などについてやさしく解説しています。香りの生成に関する類書がほとんどない今日、絶好の入門書としてお薦めいたします。」
以下がその目次。
■目次
1章 香りの生成の概要
2章 酵素反応による香気生成
(植物による香気生成/動物により生成される香気/微生物による香気生成)
3章 非酵素的反応による香気生成
(加熱による香気生成/自働酸化による香気生成)/
4章  香りと人間の関わり
(食べ物のおいしさを追求する人間/香りを楽しむ人間/香気生成反応を利用したフレーバーの製造)
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少し著者について調べてみた。特許はなさそうである。酵素処理フレーバーの研究をしているようで、1980年代に食品化学系の雑誌に投稿がある。乳関係のフレーバーの生化学的生成経路についての投稿もある。他にはバニリンの生合成経路、光学活性種の香気差異に関する研究、官能評価に関する研究がある。
今は友人が読んでいるので、手元に本が来たらもう少し読んでみようと思っている。(しかし…参考文献が網羅されていれば完璧なのだが…)

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