フレグランスクリエーション

(前回に引き続き;博士課程志願のからみでスライドを準備した。結局のところ、香りを作るとは何なのか?それを説明する必要があった。その際考察して準備した内容に関して転記しておく。)

フレグランスの究極的な目的は、清潔感の演出、色気の演出、にある。その効果を狙ってオリジナルの香りを創造する。重要なのは「調和感」とイメージの演出になる。

イメージの演出とは、フレグランス史の文脈における香りの表現のことである。調香の中にどんなアコードを感じられるか?そしてそのアコードの記憶は香水や昔使っていた化粧品の記憶に繋がっている。嗅いだときに知っている香りだったり、今まで見てきた中で良い香りと意識させられたり、逆に「嗅いだことない、苦手かも」と感じてしまったり、色々な意識が立ち上ってくる。

さて、フレグランスの調香のためのトレーニングもフレーバーのものと似ていて、まず単品香料の記憶、少点数の原料からのアコードの習得、簡易化された処方の習得から始められる。
◆香料のニオイを記憶する実習(単品香料 天然・合成)
◆香料を混ぜ合わせ、調合香料を作る調香実習
◆調香した香料を食品や化粧品に付香して商品化するアプリケーション技術

香料を混ぜ合わせた時の匂いの変化は
• バラバラに出る
• 一つのイメージになる(強くなる)
• 一つのイメージになる(弱くなる)
• 別のイメージになる
という4つがある。このうちアコードとして記憶すべきなのは強くなる場合と、新しいイメージに結像する場合である。これらの積み重ね、またはこのような方法論で、良い匂いは開発・開拓される。

香調とアコードの関係の話に付け加えておくと、ファッションの最先端となるような斬新で市場を席巻した香水が出現すると、その香調はイミテーションされ、香調はシャンプーのようなより低価格のトイレタリー商品に波及する。従って、フレグランスにおいて真に求められるのは斬新な香調の開発になる。斬新な香調は、今までなかった良アコードから作り出される、全く試されていなかった組合せから新アコードが出てくることもあるし、新規合成ケミカルを使った新アコードを導入するなどの場合もある。

フレグランスに関してはアコード以外に良く見かける三角の図(トップ、ミドル、ラスト)がある。これは最初にトップノートが香り、その次に香水のメインの部分であるミドルが香り、最後にラスト(ベース)ノートが香ります、という説明だと思われがちだが、それは半分くらいしか合っていない。「アコードの補助」という考え方として、保留剤で持続時間を長くし、香調変化をマイルドにするという考え方と、トップノートの付与で香りを強くし全体の立ち方を向上させるという考え方があり、これが残り半分だと思う。化学で言うと“共沸”的な考え方である。

またこの図は余り有名ではないのだが、良いアコードを見出したとき、そのアコードを微調整しブラッシュアップしてゆく必要がある。同じ系統の香料をどう使い分けるのか、ベースとして組むとき何に注意するのか、細かいモディファイアーをどう使いこなしてゆくのか、これらを考える際にとても役に立つ。尖がった所をなくしてゆく、間を埋められるようにして丸い仕上がりにあるようにしてゆく、硬いものと軟らかいものを使い分けて組合してゆく。このときの使いこなしのイメージはこの図のような組み方である。

1.Amazon.co.jp: 香りの創造―調香技術の理論と実際: ロバート・R. カルキン, J.シュテファン イェリネック, Robert R. Calkin, J.Stephan Jellinek, 狩野 博美: 本 図引用ここから

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